「想定外」「はしご外された」 保育園整備補助、国に突然打ち切られ自治体困惑 理由は待機児童減少 計画再検討や不足分補塡…対応迫られる事態に
2024年度分、1回目で打ち切り 対応に迫られる自治体
保育施設の整備や改修を補助する国の「就学前教育・保育施設整備交付金」を巡り、2024年度分の申請が1回目で打ち切られ、2回目以降の申請を予定していた長野県内の自治体が、整備の延期や自主財源での補てんなどの対応を迫られている。 【写真】老朽化する中野市の保育園。来年3月に閉園し、国交付金を活用し民間事業者が近くに新保育園を建設できるか不透明になった
計画再検討や自主財源への切り替えに直面
来春の2保育園の民営化に向け3億7千万円余の内示を見込んでいた中野市は計画の再検討に直面している。北佐久郡御代田町も交付金を活用し、国の「こども誰でも通園制度」に対応するため雪窓(せっそう)保育園に一時預かり施設を増改築する計画だったが、自主財源への切り替えを余儀なくされた。
昨年度まで5回程度の申請機会 3月下旬に国から「申請は中止する」
同交付金は、公立の保育施設整備に原則として国が3分の1、私立の整備には2分の1を補助する。市町村の申請をとりまとめる県によると、本年度分の1回目は今年2月、長野、上田、飯田、佐久、大町市、北佐久郡御代田町の6市町が申請し、3月末に計約8億円の内示を受けた。 県こども・家庭課によると、3月下旬に国から「予算の上限に達し、2回目の協議(申請)は中止する」との連絡を受けた。昨年度は5回の申請機会があり、それ以前も5回程度の申請ができたため、突然の打ち切りは「想定外」だったという。県内では本年度、中野市など複数の自治体が2回目以降の申請を予定しているという。
待機児童減少を理由、予算100億円減額が影響
こども家庭庁保育政策課によると、1回目の申請で359市町村に計約621億円を内示した。待機児童の減少を理由に予算を前年度に比べ100億円程減額しており、「1回目の申請で上限に達した」と説明。保育施設の老朽化が地方で課題になっている点も認識している―としつつ「交付金は待機児童の受け皿の整備を主目的に創設された」と強調。追加的な財源確保の見通しは未定という。
「財源の見通し立てられない」 中野市、民営化計画延期の可能性も
中野市は、老朽化が進む市立保育園2カ所について25年4月に民設民営で新たに開園する計画。民営化を担う事業者との契約などを経て2回目の申請で内示を受け、6月に着工する予定だった。市は昨年度、申請見通しを県を通じ国に伝えていたと説明する。 湯本隆英市長は8日の市議会全員協議会で「想定外の事態となり財源見通しが立てられない。市で交付金分を負担し来年4月の開園とするのか、交付金が見込めるまで整備を延期するかなど早急に判断しなければならない」と述べた。
御代田町は国が「異次元の少子化対策」の一環として創設する「こども誰でも通園制度」の試行的事業を担う自治体に選ばれていた。町内の保育施設に通う園児は435人(2023年度)で、10年前に比べ109人増えている。同制度は親が就労しているなどの要件を満たさなくても保育を利用できる。町は需要が高まる保育環境向上を図るため、24年度に始める方針。小園拓志町長は「はしごを外された形になっている。何とか申請が認められるようできることをやっていきたい」としている。