「冷戦後も発注減らさないで…」三菱重工会長が93年10月、防衛庁長官に要請した【自民党と企業献金 蜜月の半世紀】#15
【自民党と企業献金 蜜月の半世紀】#15 政治のみこむ軍産複合体(2) ◇ ◇ ◇ 【画像】献金1億円超は46年間で249社…企業・団体献金は3年で記録破棄の「もう1つの裏金」だ【表あり】 1989年12月、ソ連のミハイル・ゴルバチョフ書記長と米国のジョージ・H・W・ブッシュ大統領が地中海のマルタ島で会談し、冷戦の終結を宣言した。 翌年4月9日の衆議院予算委員会。当時は野党だった公明の市川雄一議員が、首相の海部俊樹を質す。 「米ソ首脳が冷戦終焉を確認している。世界情勢が大きく変わった。そういう中で前年度比6.1%も防衛費を増やす必要はあるのか。あるいはこれからの防衛力の整備に当たって、アメリカも1800億ドルですか、防衛費の削減を3年ぐらいでやる、こうおっしゃっている。ソ連もかなり防衛費を削ろうとしている」 海部の答弁は曖昧だったが、「大きな方向としては、委員の今申されたことと私は近いのではないか、こう思いながら承っておりました」と言った。
経団連も支援を提言
91年度を境に、日本でも防衛調達予算は減少に転じる。防衛調達予算とは、人件費などを抜いた予算のことだ。 このままでは軍需企業は痛手を被ることになる。 93年10月、三菱重工業会長の飯田庸太郎らは、中西啓介長官ら防衛庁幹部と懇談会を開いた。飯田は「発注を減らさないでほしい」と要望した(93年10月19日付朝日新聞)。 飯田は、この年の1月30日に掲載された毎日新聞のインタビューでは、次のように語っている。 「防衛の必要性そのものが問われることがないまま(中期防衛力整備計画の)見直しが決まってしまった。日本は独立国としてやっていけるのかとまで思ってしまう」 「独立国として門を閉めることは、夜、カギをかけて寝ることと同じ。中国や韓国など隣近所の情勢をよく見て決めないといけない」 95年には、経団連が「新時代に対応した防衛力整備計画の策定を望む」という提言を出して、政府に軍需産業を支援するよう求めた。このままでは「生産ラインの維持が困難」と述べている。 「欧米諸国とは異なり、わが国には国営の軍需工場は存在しないため、わが国の防衛生産・研究開発、装備の維持・補給・能力向上を支えているのは、産業界である」 ここから、軍需企業は経団連とともに反転攻勢をかけていく。=敬称略(つづく) ▽渡辺周(Tansa 編集長) 日本テレビを経て2000年に朝日新聞入社。17年にワセダクロニクル(現Tansa)を創刊、電通と共同通信社の癒着を暴く「買われた記事」で、日本外国特派員協会「報道の自由推進賞」。寄付で運営し非営利独立を貫く。ご支援を!