感染力強い「はしか」再び 日本で根絶したはずなのに海外から〝輸入〟される事態
78年10月開始の麻疹の定期予防接種は1~5歳が対象。つまり、現在51歳くらいまでの人は、麻疹の定期予防接種の対象だったといえる。自分がワクチン接種をしたかどうかは、「母子健康手帳」で確認を。 「麻疹の定期予防接種対象外の50代以上は、麻疹に感染した経験を持っている方がほとんどだと思います。ワクチンも接種せず、麻疹が流行した状況で日常生活を送り、感染していないというのは、麻疹の感染力からすると考えにくいのです」 予防接種の有無や麻疹にかかった記憶があいまいで、海外旅行などの渡航を計画している場合は、自宅や職場近くの医療機関で、麻疹の抗体検査を受けるのが得策。抗体価が低いときには、「MRワクチン」(麻疹・風疹混合ワクチン)を接種した上で、渡航することがなによりといえる。 「麻疹の抗体検査を受ける人で、風疹の抗体検査のクーポン対象者(2024年度中に45~62歳になる男性)は、ぜひ風疹の抗体検査も一緒に受けてください。対象の方は風疹の抗体検査を無料で受けることができます(麻疹の抗体検査は有料)」 ◇帰国後の症状も注意 麻疹から身を守るために欠かせないワクチンだが、最近、地域によっては供給量が少なくなっている。クリニックによっては、定期接種すらも予約を受け付けられない状況だった。厚労省の通達で4月以降の安定供給の徹底が求められているが、地域によってはしばらく品不足が続く可能性がある。 「麻疹のワクチンは、子どもたちの定期予防接種が優先されます。そのため、大人はまず抗体検査を受けて、ご自身の抗体価を確かめましょう」 麻疹にかかった記憶もなく、予防接種も受けないまま渡航し、帰国後に咳や発熱などの症状に見舞われたときには、受診する前に医療機関へ電話で相談することが大切。仮に麻疹にかかっていて、公共の場に出てしまうと、他人への感染を広げてしまうことがあるからだ。 「予防接種がまだの小さなお子さんも、医療機関にはいる可能性があります。帰国後に症状が出たときには、必ず電話をしてから受診するようにしましょう。そして、ぜひご自身の麻疹の抗体の有無を知ったうえで、必要に応じてワクチン接種を活用し、予防してから海外渡航はしていただきたいと思います」と多屋所長は呼びかける。(医療ジャーナリスト・安達純子)
<サンデー毎日6月9日号(5月28日発売)より>