医療保険に入っていなかった女性、1年前から症状を訴えるも病院は「気のせい」。米医療現場の悲しい実態を明かす
彼女の名は、フローレンス・シャンパーニュ。ソーシャルワーカーとして、長年ホワイトハウスや司法省などの政府機関で働いてきた堅実な女性だ。休職中だった2012年、52歳の時に、国が運営する職業訓練イベントに参加することになった彼女はこの日、想像もしないような苦しみを味わうこととなった。 【写真】心臓発作の「前兆」を軽視しないで!若い人も注意したい、女性の心臓発作によくある4つの症状 イベント会場に到着し、車を降りて会が開かれる建物に向かって歩いていたら、突然息が苦しくなったのだ。なんとか建物に入り、ベンチに座るもまともに呼吸ができず床にしゃがみこんだ。 実はフローレンスには、1年ほど前から頻繁に"体が出すSOSサイン"の症状があった。誰かに針で胸を突き刺されているような痛みが走り、そのたびに緊急治療室(ER)に入って心電図をとったが、かかりつけの病院からの診断結果はいつだって"異常なし"(何かあったとしても、彼女には言わなかった)。 ただ高血圧の薬を処方されて自宅に戻る、ということを繰り返していたという。ある時は不安定な狭心症だと診断されたこともあり、自分の症状に名前がついたことで少しの満足感はあったが、結局症状は悪化する一方だった。彼女は1年で5~6回ERに入っていたが、いつもどんな時も家に帰された。
命を救った1本の電話
職業訓練イベントで、経験したことのない苦しみを感じた彼女は、その後すぐさま別の心臓専門医に電話をかけ、「痛みがひどくなっています。こんな痛みは初めて。息ができません」とささやいた。事情を聞いた医師は、すぐに彼女がいる建物の近くにある心臓専門医へと電話で案内してくれたという。 こうして到着した初診の心臓専門医に一連の話をすると、急ピッチで入院の手配が始まった。まずは血管に詰まりがないかどうか見るために心臓カテーテル検査を行うという。そして医師は、フローレンスになんとも衝撃的な事実を告げた。「あなたは保険に入っていませんね。恐らく、だから前の病院は受けるべき適切な検査をあなたに受けさせなかったのでしょう。ですが、その検査を今からここでやりますからね」と伝えた。もしこの時、この医師が検査を行うと判断しなかったら、彼女はどうなっていたのだろう。 無事に検査が終了し、伝えられた診断結果は今までに一度も聞いたことのない深刻な状態だった。冠動脈の左前下行枝(冠動脈狭窄症)が99.9%詰まっていて、医師は「急いで心臓切開手術をしないと、あなたは死んでしまう!!!」と言い、大慌てで彼女を手術室に運んだ。