<春へ一丸・’23センバツ慶応>支える人/上 OBボランティア「学生コーチ」 選手に寄り添う兄貴分 /神奈川
◇一緒に悩み「最適解」へ導く 「自分は野球の『成功者』ではない。だからこそ、選手と一緒に悩み、それぞれに合わせた指導ができると思っている」(チームOBで慶応大3年の斎藤俊さん) 慶応では大学に進学したチームのOBが、ボランティアの「学生コーチ」としてチームを支える伝統がある。現在は21歳の斎藤さんを含めて、大学1~3年の約10人がチームに帯同。全員が慶応大では野球部に所属しておらず、講義がない時間の合間を縫って練習に参加している。 学生コーチの役割は多岐にわたる。選手が守備位置につき捕球や送球の練習をする「シートノック」でバットを握ったり、筋力トレーニングでアドバイスをしたりするほか、事前に対戦相手の試合に足を運び、戦力分析を担当することもある。 精神面での選手たちのケアも重要な役割だ。例えば、ベンチ入りできない選手は士気の維持が難しい場合がある。選手に寄り添い、それぞれに合った目標づくりの助言もする。主将の大村昊澄(2年)は「年齢も近く、最近まで現役でやっていた人たちなので、同じ視点に立って考えてくれる。気軽に声もかけてくれるし、相談もしやすい」と明かす。 斎藤さんは高校2年だった2018年、センバツと夏の甲子園に出場したチームで野手としてベンチ入りを果たしたが、試合には出場できなかった。右肘にけがを抱えていたこともあり、大学では野球部に入らなかった。「成功した人であれば、選手に自身の成功体験を語ることができる。ただそれは押しつけになってしまうかもしれない」。明確な「答え」を持ち合わせていないからこそ、選手に寄り添い、一緒になって最適解を探す指導ができると信じている。 実は、森林貴彦監督(49)もかつて学生コーチを務めていた。「学生コーチは選手の伴走者。兄貴分的な存在で、彼らがいてくれるだけで助かる」。学生コーチにとっても「指導する面白さ」を感じることができ、かけがえのない経験になるという。 学生コーチと選手が互いに成長しながらチーム力を上げていくのが慶応流。OBも含めたチーム一丸で5年ぶりのセンバツに臨む。 ◇ 第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場する慶応。3月18日の開幕に向け、選手を支える人たちを3回に分けて紹介する。