King Gnu、Eve、LiSA、優里……怒涛の初韓国公演ラッシュで沸く日本アーティスト
SEVENTEENやTREASUREにカバーされて韓国で人気となった優里
また、これまで挙げてきたアニメタイアップとは異なる形でグローバルに進出しているアーティストも多い。優里は、11月に自身初となる海外での単独公演『Yuuri Live in Seoul 2024「한국에서 제일 많이 듣는 J-POP이 베텔기우스라고 들어서, 한국에서 단독 공연 해볼게」』(韓国で1番聴かれてるJ-POPがベテルギウスって聴いたから韓国でワンマンライブやってみるぜ)を、韓国・YES24 LIVE HALLにて開催予定だ。優里の場合は、2024年上半期のBillboard Japan Songs(South Korea)にて1位に輝いた「ベテルギウス」が、海外進出の大きな足掛かりとなったと想像できる。SEVENTEENのDKやTREASUREのパク・ジョンウをはじめ、韓国の様々なアーティストがカバーをした動画がSNSを中心に大きなバズを生んでいたことから、この時代におけるSNSの影響力の大きさを改めて実感する。 いくつかのアーティストの事例を挙げてみたことで、改めて、アニメタイアップが韓国を含めたグローバルのヒットの大きなきっかけとなっていることが浮き彫りになったと思う。ただ優里のようにアニメタイアップだけがヒットの理由であると言い切ることは決してできないし、また言うまでもなく、アニメタイアップだからといって海の向こうでのヒットが確約されているわけではない。極めてシンプルな話に帰着する形にはなってしまうが、やはり、良い音楽を作ることから全てが始まるのだと思う。アニメ作品への深い理解と愛、リスペクトに基づく楽曲を生み出し、それがアニメファンを中心に支持を集め、次第に、Netflixなどの配信プラットフォームやSNSなどを通して世界各国へと広がっていく。世界を目指す上で大切なのは、輪郭が曖昧な“グローバル”のリスナーを意識することではなく、まずは、日本のアニメのファンやリスナーを心から熱狂させること。今回紹介した韓国公演の数々は、その熱狂が韓国にも飛び火している証左の一つと言える。 もう一つ思ったのは、韓国のリスナーが日本のアーティストと出会ったきっかけがアニメタイアップであったとしても、それは最初の出会いのきっかけに過ぎず、その他の楽曲も広く愛されているということだ。例えば、先ほど紹介したEveのアジアツアーの開催期間中、X(旧Twitter)で、韓国を含む各国のライブなどの模様を収めたドキュメントムービーが公開されていた。現地の並々ならぬ熱気や一体感を伝えるそれらのムービーは、Eveの音楽がいかに多くの海外のファンから愛されているか、いかに深く愛されているかを如実に伝えるものだった。 私たち日本人が何かの出来事をきっかけにして海外のアーティストのことを深く好きになっていくのと同じように、海外のリスナーも日本のアーティストを深く好きになる。そうした国境を越えたアーティストとファンの幸福な関係性が、近年特に増えているように思う。 海外で人気を拡大する日本のアーティストの多くにとってアニメタイアップが大きな躍進のきっかけになっていることは間違いない。しかし、藤井 風や新しい学校のリーダーズ、前述の優里のように、TikTokをはじめとしたSNSの存在によって、アニメタイアップを契機としない形で認知と支持を集めているアーティストもいる。国境を越えて人気を高めてゆくアニメと、同じく国境を越えてユーザーに新しい音楽との出会いのきっかけを与えているとなるSNS。2020年代に入ってから、この掛け合わせによるグローバルヒットが数多く生まれている。日本のアーティストの海を越えた躍進に、引き続き注目していきたい。
松本侃士
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