EW&Fの大ヒット名盤『All ‘N All』はなぜ『太陽神』という邦題になったのか?「宇宙のファンタジー」が日本で受けた背景【休日に聴きたい名盤】
「宇宙のファンタジー」は日本とイタリアで大ヒット
「太陽神』と命名したTディレクターのもうひとつのヒットは、アメリカで人気のあったシングル「Jupiter(邦題:銀河の覇者)」でなく、「Fantasy(邦題:宇宙のファンタジー)」をシングルとして重点プロモーションしたことだ。 狙い通り、この曲は日本で大ヒットとなった。アメリカではさほどのヒットにならず、日本とイタリアでのみ大ヒットしたというのは興味深い。
インタールードが素晴らしい!名曲「ブラジルの余韻」
『太陽神』はメインの楽曲だけでなくインタールード(間奏曲)も素晴しかった。アフリカ原産でピアノのルーツと言われる親指ピアノ(カリンバ)をフィーチャーした「In The Marketplace(邦題:市のたつ広場)」、 当時のブラジリアン音楽の鬼才デオダートに作らせた「Brazilian Rhyme (邦題:ブラジ ルの余韻)」などは、間奏曲でなくフル・ヴァージョンを聴きたくなる。モーリス・ホワイ トはカリンバを愛して、当時の自身のオフィスはカリンバ・プロダクションだった。 47年前の音楽なのに「太陽神』には現代の音楽ファンの心も熱くするグルーヴがある。 若いファンにはその新鮮さと熱を味わっていただきたい。 ■『All ‘N All/太陽神』 01、「Serpentine Fire」太陽の戦士 02、「Fantasy」宇宙のファンタジー 03、「In the Marketplace」市のたつ広場 (間奏曲) 04、「Jupiter」銀河の覇者 05、「Love’s Holiday」ラヴズ・ホリデー 06、「Brazilian Rhyme(Beijo)」ブラジルの余韻 (間奏曲) 07、「I’ll Write a Song for You」聖なる愛の歌 08、「Magic Mind」マジック・マインド 09、「Runnin」ランニン 10、「Brazilian Rhyme (Ponta De Areia)」ブラジルの余韻 11、「Be Ever Wonderful」ビー・エヴァー・ワンダフル 岩田由記夫 1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。近著は『岩田由記夫のRock & Pop オーディオ入門 音楽とオーディオの新発見(ONTOMO MOOK)』(音楽之友社・1980円)。
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