EW&Fの大ヒット名盤『All ‘N All』はなぜ『太陽神』という邦題になったのか?「宇宙のファンタジー」が日本で受けた背景【休日に聴きたい名盤】
「Earth, Wind & Fire」は、リーダーのモーリス・ホワイトが名付け親
「Earth, Wind & Fire」(土、空気、火)と 名付けたのはリーダーのモーリス・ホワイト(1941~2016年)だった。これはモーリスの占星図に、土、空気、水の3つの要素があることに由来していた。 『All ‘N All』、邦訳すると"全体を見て"などといった意味になる。邦題は"太陽神"として知られていて、このアルバム以前にも彼らのアルバムは邦題が特徴的だった。『太陽神』の前には『魂』、『灼熱の狂宴』、『暗黒への挑戦』などといった邦題が付けられていた。そういった"邦題群"の中でも 本作『太陽神』と次作『黙示録』は分かりやすく秀逸である。
長岡秀星のジャケットを見て閃いた!
『太陽神』という日本語のタイトルを思いついたの は当時のCBSソニー・レコードの名物ディレクター、Tさんだった。『太陽神』のジャ ケット・デザインは、宇宙やSFをイメージした作風で国際的に人気の高かったイラストレーターの長岡秀星(ながおか・しゅうせい、1936~2015年)が手掛けた。Tさんは、アメリカから送られて来た『All ‘N All』のジャケットを見るや、"太陽神"という言葉が脳内をかけめぐったと、電話でリリースのニュースを伝える時に教えてくれた。 それまでアメリカではEW&Fは超人気バンドだったが、日本では今ひとつ、一般的な人気に欠けていた。そのサウンドもさることながら、ジャケットのイメージとぴったり合った『太陽神』というタイトルも、このアルバムの日本でのヒットに貢献していると思う。
日本人好みの"ドンシャリ音"が特徴的
EW&Fのサウンドは、日本人好みのオー ディオ用語で言う"ドンシャリ"だ。低域がカチッとしていて、高域が対比的にシャリシャリした音質なのだ。 このアルバムのミックスダウン~最終的な音決めをしたアメリカの名エンジニア、ジョージ・マッセンバーグにインタビューした時、何故このような音質に仕上げたのか訊ねた。 ラジオが日本の何十倍も発達しているアメリカではあるが、1970年代、ブラック・ミュージックはFMでなく再生帯域の幅が狭いAM局中心にオンエアされていた。そんな中で EW&Fのように極端とも言えるドンシャリ音の楽曲は、音のエッジが立って、他の曲とひと味違う再生音色になる。要するに目立った音色になるので、そこを狙ったとジョージ・マッセンバーグは語っていた。
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