米の品種転換急ピッチ 猛暑頻発 産地は高温耐性に手応え
米産地で高温耐性品種の拡大に向けた動きが加速している。2023年産米は記録的な猛暑で、1等米比率が大きく低下したためだ。24年産の耐性品種の作付目標を引き上げたり、行政による増産支援に急きょ乗り出したりする産地が目立つ。温暖化が進む中、暑さに強い米産地への転換を急ぐ。 個性豊かな米袋をスライド画像で 23年産の水稲うるち玄米の1等米比率は61%(11月末時点)。現行検査が始まった04年産以降で最低だった10年産の62%(確定値)を下回る。「コシヒカリ」50%(22年産の確定値から25ポイント減)、「あきたこまち」63%(同25ポイント減)など、全国で広く作られる品種で等級低下が目立つ。
高温耐性は1等米比率高く
一方、高温耐性品種はおおむね、堅調な結果を残している。山形県が育成した高温耐性品種で、18年に登場した「雪若丸」の1等米比率は87%。県内で主力の「はえぬき」は36%で、差は歴然だ。県は急きょ「雪若丸」の種もみを確保し、24年産の栽培面積は当初計画から約1割増やして5600ヘクタールにする。県は「現場の雪若丸拡大の要望はかなり高い」(県産米ブランド戦略担当)とし、補正予算で種もみ増産にてこ入れする。 秋田県は主力「あきたこまち」の1等米比率は57%だが、高温耐性を持ち22年にデビューした「サキホコレ」は93%に上る。「『作って良かった』と、農家の励みになっている」(県水田総合利用課)。県は31年までに面積を22年比の10倍、8000ヘクタールに広げる目標を掲げており、販促と併せて作付けを広げる。 新潟県「新之助」、富山県「富富富」も同様に、主力の「コシヒカリ」が低下する中、高い等級を維持した。新潟県は昨年の猛暑を受け、将来的に耐性品種を中心にする方針を提示。一方、足元の対策として「コシヒカリ」の水・肥培管理の改善も重視する。「コシヒカリ偏重の是正」を掲げる富山県は、「耐性品種への転換に加え、早生から晩生まで品種を導入し、高温リスクを分散させる」(農産食品課)考えだ。 23年産では、高温耐性をうたう品種でも1等米比率を落としたものもあった。広範な地域で作られる「つや姫」は1等米比率65%(同29ポイント減)。主産地の山形県は「出穂が早まり、例年より条件が過酷だった」とし、対策を模索する。
10年間で面積3倍
農水省によると、高温耐性品種の作付面積は22年産で15万9587ヘクタールに上り、10年前の約3倍。全品種の12.8%を占める。同省は今後も拡大すると見通し「作期がうまく分散できるか、需要がどの程度あるかなどを検討し、他品種とバランスを取ることが重要だ」(穀物課)とする。 <ことば>高温耐性品種 高温による等級低下や収量低下などの影響を受けにくい品種。うるち米は出穂期が高温だと、でんぷんがもみに十分に蓄積されずに隙間ができ、白く濁って見える白未熟粒が増え、等級低下につながる。開花期が高温だと受粉してももみが実らない不稔(ふねん)となる場合もある。こうした障害が出にくい特性を備える。
日本農業新聞