山下智久の仕草に滲む“繊細な芝居力” 『ブルーモーメント』晴原と雲田に感じる確かな絆
山下智久が体現する晴原の“静かな感情の動き”
各地域に納得してもらうためにも、まずは園部の疑惑を払拭しようと、台風自体の動きを解析しつつ、工場での爆発事故を調査することに。今まで以上のSDMの連携パワーと、最終的には260万人の命を救おうとする力強い晴原の姿を見ることができる。また、パソコンに向かって解析し続ける雲田彩(出口夏希)と晴原の後ろ姿には確かな絆も感じられる。台詞や佇まいだけでなく、晴原の使命感を体全体で表現していることがわかるシーンだ。 そして爆発の理由を明らかにし、ガス漏れを引き起こした人物に真実を問う際、晴原は眉を寄せて厳しい目つきを向けつつも、気持ちを抑え冷静に話していた。一方で、園部と工場の人たちが和解したところを見届けると、一瞬安堵の表情を見せ、また台風の解析に本腰を入れるために真剣な顔に戻る。このミリ単位で変わる顔の動きによって、無意識に彼の心情を読み取ることができるため、気持ちを表現する言葉が少なくても、晴原の想いが自然と伝わってくる。SDMを包む独特の緊張感もまた、彼の仕草から生み出されているのではないだろうか。 「チーム全員の力で抗う」と晴原が言うように、ドラマで描かれるSDMのチームワークには、本作の座長として山下が出演者やスタッフをまとめてきた空気感が表れているように思う。今までも数々の映画やドラマに出演してきた山下だが、『ブルーモーメント』では冷静に全体を俯瞰し、チームをまとめている。そして静かな感情の動きを繊細に演じ切った。 第9話の終盤では、園部がジャケットを羽織ってSDMに戻り、各地域の同意を得て事前に避難を促すことに成功。しかし安心も束の間、台風による遠隔豪雨で地盤が悪くなり、道路が陥没。割れた地面に人が巻き込まれ3名が死亡してしまう。 「自然の脅威はいつだってこちらの予測を超えてくる」 灯を失ったあの豪雨を思い出させるような大雨によって、ついに犠牲者が出てしまった。既にやって来ているスーパー台風。これ以上犠牲者を出さないために、SDMには何ができるのか。最後まで戦い続けると決意した晴原に託された一手、そして260万人の運命の行く末とは。SDM、そして『ブルーモーメント』チームの結束力はどこまで私たちを驚かせてくれるのか、最後までしっかりと見届けたい。
伊藤万弥乃