躍動する忍者と、その奥の影の先──。森山開次、美木マサオがのぞむダンス作品『新版・NINJA』再演
言葉遊びが面白い、でもダンスで笑わせたい
2022年には、中劇場へと場所を移し『新版・NINJA』として上演された本作。森山が描き出す世界はそこで、さらなる深みを見せていく。 森山 空間からイメージが想起されるってことがありますよね。僕がこだわっていたのは、山とか谷。森には様々な命が潜んでいて、虫とかいろんなものがいて、その奥に足を一歩、踏み入れていく──。小劇場ではその奥の影の先、という表現はなかなかできなかったけれど、大きい劇場だからこそできる奥行きと同時に、張り出し舞台でしっかりと近くに感じてもらいたいとも思いました。子どもたちは怖いもの、見てはならないものに対してすごく敏感。興味を持って踏み入ろうとする。だから天狗はちょっと怖くしたかったし、姫の役割もだいぶ変わりました。バレリーナの身体を使いながら、もう一歩、奥に引き込んでいく重要なキャラクターにしていこうと、変えていったんです。 集ったのは、新体操出身のダンサーを含む多彩な演者たち。そこで美木が担う役割とは──? 森山 マサオくんは、あの──、形容しがたい存在なんです(笑)。言葉も使う人、ダンスもやるけれどしっかりと言葉とともに表現する人として、とても頼りにしています。 私は意外と、オヤジギャグのような言葉遊びも好きで、この作品の中でも「なめくじにょろにょろなにぬねの~」といった、ひらがなを組み合わせた言葉の面白さを取り込んでいます。忍者も術の名前や呪文を唱えたりしますよね。そんな中で、マサオくんにはダンスというより言葉を発する役割として出てもらっています。声が特徴的で、「殿のおなーりー」なんて本当に高いトーンで、すごく遠くまで届く。 美木 演劇から入ったということもありますが、小さい頃から声は大きかったです(笑)。 森山 この作品にはいろんな動植物が出てきて、いろんな忍び方があって、たとえば、裏方の演出部の人たちが忍者のように居たりもする。日本の伝統芸能でいえば、黒衣とか後見とか人形を遣う人とか、そこには居ないけれど役割を果たして表現する、裏と表の中間、狭間に存在できる身体に、すごく興味がある。でも悔しいのは、お客さんが笑ってくれるのは「結局、言葉じゃん!」ってこと(笑)。川瀬浩介さんの音楽が「ゲコゲコゲッコー」とかいって、それは可笑しいよね。いや、でもダンスで笑わせたい。 美木 それは結構、難しいです(笑)! 森山 虚しくなることもあります。『春の祭典』をガーッて踊るにしたって、あのストラヴィンスキーの音楽あってこそ、そこに到達できる。ダンスは、そうした“何か”と接続して豊かな表現ができるモノ。だから、マサオくんの発する言葉、ひらがな言葉が、身体とともに子どもたちに届き、はじめて想像が膨らんでいくのだと思います。