インドネシアに敗れた韓国が「戦犯探し」に躍起になる前に直視しなければならない「現実」
Aマッチ出場経験の差
さらに国際経験が豊富な選手が韓国に比べて多かったことも指摘。「A代表と五輪代表間の選手の交流を積極的に進めてきた。シン・テヨン監督が2チームの指揮を執っていたためそれが可能だったわけだ。23歳以下の代表23選手中、Aマッチ出場経験があるのは22人もいた。3番手のGK以外はすべてA代表デビューを果たしている。韓国は23人中、Aマッチでプレーしたことがあるのは3人だけだ」。 用意周到に準備してきた結果、「組織力、体力、チームワークでインドネシアは韓国を上回っていた。もちろんパワーと体格では韓国に負けることはあっても、技術とスピードは韓国にも劣らなかった」とインドネシアの強さを素直に認めて評価していた。 それこそ「慢心」以外の何物でもない。韓国は準々決勝の対戦相手がカタールでなく、インドネシアで良かったと胸をなでおりし、それこそ勝てる相手と見ていただろう。 「韓国が忘れているのは、インドネシアが4年間で一貫した目標で戦略的に準備し、試行錯誤しながらチームを強化してきた。反面、韓国は準備が徹底されていなかった。名前ばかりの“アジアの強豪”というプライドだけでは、格下とはいえ勝てなかった。アジアで結果を残したインドネシアから学ばなければ、アジアの強豪の地位を守れない」と厳しく批判した。 一方で韓国を破ったインドネシアはベスト4入りを果たし、パリ五輪出場(3位までが出場権獲得。4位はギニアとのプレーオフに回る)に大きく近づいた。 特にシン・テヨン監督は現地メディアから「インドネシアの英雄」との声も上がるほどで、韓国に勝利のあとインドネシアサッカー協会と2027年まで代表監督の契約を延長したという。ちなみに母国の韓国を下したことで、シン・テヨン監督は「とてもうれしいが、心の奥では辛い思いもある」と本音を吐露していた。 韓国が敗れたとはいえ、インドネシアのみならずアジア全体のレベルの底上げに貢献しているシン・テヨン監督の手腕は改めて評価されてもいいだろう。韓国サッカー界もインドネシアが、パリ五輪切符を勝ち取ることができるのかに注目している。もちろん日本代表との決勝戦となればなおさら目が離せない。
金 明昱(スポーツライター)