「金利のある時代」に必ず知っておきたい住宅ローンリスク、期間選択型の固定金利は天井知らずに返済額が増える恐れ
2024年3月、日本銀行がマイナス金利政策、大規模金融緩和を解除してついに「金利のある時代」に突入した。金利が上がれば住宅ローン金利の上昇も避けられず、返済リスクが高まる。では、今後どんなリスクにどう対応すればいいのだろうか。住宅ジャーナリストの山下和之氏が、本格的な金利上昇の前に準備しておきたい点を整理する。(JBpress編集部) 【表】金利上昇でこんなに返済額が増える!(固定金利期間選択型の返済シミュレーション) ■ 5年後に返済額が「最大25%」増加する可能性あり 住宅ローンの金利リスクについて、住宅金融支援機構が実際に住宅ローンを利用している人たちに質問したところ、【図表1】のような調査結果が出た。 金利リスクが大きいといわれる変動金利型利用者が対象だが、「適用金利や返済額の見直しルール」については、「十分理解」「ほぼ理解」の合計が65.7%に達しているものの、「理解しているか不安」「よく理解していない」「全く理解していない」の合計も34.2%と少なくない。3人に1人は十分に理解しているとはいえないのが現実だ。 では、その変動型住宅ローンの適用金利や返済額の見直しルールはどうなっているのか。 変動型住宅ローンの借り入れ後には市中の金利動向に応じて半年に一度、適用金利が見直されることになっている。ただし、あまり頻繁に金利が変わると計画を立てにくいので、返済額の見直しは5年に1度で、5年間は金利動向にかかわらず返済額は変わらない。 また、5年後に金利が上がって返済額が増えるときには、増額率を25%までに抑える「125%ルール」が採用されている。過度な増額で利用者の生活を圧迫しないための配慮だが、逆にいえば5年後には返済額が25%増える可能性があるわけだ。
■ 「返しても返しても元金が減らない」事態も では、現実にどのくらい返済額が増える可能性があるのか。先の調査結果では「将来の金利上昇によって返済額がどれくらい増えるか」についても、十分に理解していない人が合計39.7%と4割近くに達しているので、その点への認識も重要だ。 そこで、金利上昇で返済額がどれくらい増えるのか、借入額5000万円、35年元利均等・ボーナス返済なしの場合で試算したのが【図表2】だ。便宜的に5年間は金利が変わらず、5年後に金利が上がった場合の返済額を示した。 当初の金利が0.375%なら毎月返済額は12万7049円だが、5年後に金利が0.5ポイント上昇し、0.875%になった場合には13万6647円に増え、7.6%の増額になる。1.375%になると14万6692円で15.5%の増額になる。 さらに、2.375%になったときには計算上は16万8102円になるのだが、125%ルールによって15万8811円に抑えられる。 5年後までの間に金利が上がった場合には、毎月返済額は変えずに返済額に占める利息分と元金分を調整して対応する。 金利が上がれば利息分が増えて元金分が減り、元金の減り方が遅くなってしまう。最悪の場合、利息分だけで毎月返済額を上回り「未払い利息」が発生するリスクもある。そうなると、返しても返しても元金が減らないどころか、実質的に増加するという事態に陥ってしまう。