【問う 時速194km交通死亡事故】公判で証人のプロドライバー「一般道では制御困難」 弁護側「経験に基づく感覚や印象」
大分市内で2021年2月に時速194キロで車を運転し、右折車に激突して死亡事故を起こしたとして自動車運転処罰法違反(危険運転致死)の罪に問われた被告の男(23)=同市=の裁判員裁判は8日、第3回公判があった。県警の走行実験に関わったプロドライバーが検察側の証人として出廷。「右折中の車に対応できる速度ではない。自車の運転で精いっぱいで、気付いた瞬間にぶつかったと思う」と指摘した。 プロドライバーは、国内最高峰のレースへの出場経験がある日田市の男性(48)。23年2月、市内のサーキット場で実施した実験に協力し、乗用車を時速190キロで走らせた。 男性は、一般道は車が頻繁に行き交うため「路面にわだちや段差があるのが普通。ドライバーのハンドル操作で真っすぐ進むことになるが、速過ぎると制御は困難になる」と証言した。 時速194キロの危険性については「縦揺れが大きくなり、ちょっとした段差で車がはねる。視野が狭まり、周りを見る余裕はない」と説明。裁判官からの尋問で、車線を逸脱したりする可能性を聞かれると、「150キロ以上だと不安定になる。170キロを超えるとリスクは高まる」と答えた。 危険運転致死罪が成立しないと主張する弁護側は反対尋問で、男性の証言内容は「経験に基づく感覚や印象」などと強調。被告の車はスポーツカーで「最高速度250キロの性能があった」として、実験で使った車よりも安定性が高いと言及した。 事故当時の路面状況について「現場のどこに、どの程度の凹凸やわだちがあったのかは特定できるのか」と問いただすと、男性は「事実上無理。特定はできない」と答えた。 公判の争点は、同罪の対象となる▽進行を制御することが困難な高速度▽妨害目的運転―に当たるかどうか。 過去の裁判例によると、「制御困難な高速度」は、超過した速度だけでなく「道路の状況」「車の性能」に応じた運転ができていなかったことの立証も必要とされる。 次回の第4回公判は11日で、視野の専門家が証人尋問を受ける。 <メモ> 事故は2021年2月9日午後11時過ぎ、大分市大在の県道(法定速度60キロ)で発生した。当時19歳だった被告の男は、乗用車を時速194キロで走らせ、交差点を右折してきた乗用車に激突。運転していた同市の男性会社員=当時(50)=を出血性ショックで死亡させた。