中谷潤人が自覚している癖とは? 井上尚弥とのスーパーファイトが期待される〝愛の拳士〟
【ボクシングコラム】人はおのおの、さまざまな癖を持つ。自覚している癖、していない癖。人によってさまざまなものがあると思う。WBC世界バンタム級王者の中谷潤人(26)=M・T=はボクシングにおける癖の一つを自覚している。試合中によく、左のグローブをトランクスで拭くしぐさを見せることだ。 「周りに言われて自分の試合映像を見返して、『確かにやっているな』と思いました。グローブにワセリンが付くのが嫌で。癖ですね。無意識にやっちゃう」 記者の「あのしぐさには何か意図があるのか? それともただの癖なのか?」という質問に苦笑いしながらこう返答した。 中谷のこのしぐさは対戦相手とかなり距離が離れているときに出るので、ほとんど影響はない。それでも、中谷はバンタム級での他団体王者との統一戦、さらには1階級上の4団体世界スーパーバンタム級統一王者の井上尚弥(31)=大橋=との対戦も期待されるプロ29戦29勝(22KO)のサウスポーで、日本ボクシング界の宝。今後は対戦相手のレベルもグンと上がることが予想される。 いらぬ心配をして、僭越(せんえつ)ながら「野球の投手が『このしぐさをしたら、変化球がくる』みたいに、中谷選手があのしぐさをしたら、左の強打がくるという説もありますが」と少し意地悪な質問をした。すると、「じゃあフェイントであのしぐさをしてから右フックを打とうかな」と笑い飛ばした。 常に周囲への感謝を忘れず、謙虚な姿勢を貫く。世界3階級制覇しようが、米専門誌「ザ・リング」選定の全階級を通じた最強ランキング、パウンド・フォー・パウンド(PFP)で9位になろうが、偉ぶる様子はまったくない。合計するともう50回以上は取材させていただいていると思うが、どんなに疲れていようが、減量が厳しい時期であろうが、不機嫌な様子を記者に見せたことはない。これは尚弥らほかの日本人世界王者にも共通して言えることだが、〝強い選手ほど優しい〟と日々感じさせられている。 「PFP1位」を目標に掲げる中谷。今後、この癖を直しにかかるのか、それとも気にしないのか、はたまた本当にフェイントに使うのか-。〝愛の拳士〟の取材をするのが、ますます楽しみになった。(尾﨑陽介)