Jリーグが新型コロナ余波で優勝賞金、分配金の見直しも
日本野球機構(NPB)と「新型コロナウイルス対策連絡会議」を共同で設立し、東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授(感染制御学)を座長とする専門家チームの助言を受けてきたなかで、スタジアムの各ゲートにサーモメーターを設置。37.5度以上の微熱を出しているファン・サポーターを入場時に検出し、原則としてスタジアムへの入場を断る方針が固められている。 しかし、高額機器でもあるサーモメーターは、サッカー以外のあらゆる方面からもニーズが高まっている。こうした状況を受けて、J3までを含めたすべてのスタジアムで設置されるサーモメーターの調達に関しては、すべてをJリーグが負担することを決めた。村井チェアマンがこう説明する。 「個々のクラブが対応しても、購入するルートなどが限られてくる可能性があります。なので、リーグとして購入するか、もしくはリースを活用していきたい。土曜日に使用されたものを例えば日曜日に別のスタジアムへ移動させて使う形で、利用効率を上げていければと考えています」 さまざまな出費のなかには、2005年から制度化されている公式試合安定開催基金からの融資が含まれてくる可能性もある。経営難によって公式戦への継続的な参加が困難になったJクラブへ、審議の上で必要な資金を融資する制度を、新型コロナウイルス禍でも適用する青写真が描かれている。 J2の中位以下やJ3のなかには純資産が少なく、原則として2週間に一度開催されるホームゲームの入場料収入から、運営経費を捻出する形で予算を組んでいるクラブが少なくない。ゆえに公式戦の中断が長期化するなかで、財政的な問題を抱えるクラブが現れる可能性も考えなければいけない。
「資金繰りなどについてはすべてのクラブに対してほぼ確認を終えていて、一応状況は見えています。現時点において(公式試合安定開催基金への)融資を申し入れてきたクラブはありません」 こう語る村井チェアマンのもとで、公式戦の再開へ向けて立ち上げられた4つのプロジェクトのなかには、財務サポートを目的としているチームもある。各クラブと緊密に連絡を取り合ってきたなかで、今後はさらに踏み込んで状況を把握していきたいと同チェアマンは今後の展望を描く。 「キャッシュフローなど細かい財務状況を提出いただいていますが、キャッシュポジションがボトムになるタイミングがいつごろに想定されるかという部分を含めて、先行きの見通しなども議論していきたいと考えています。いま現在は大丈夫ですけど、例えばこの状態が続いていけばどこのタイミングで危なくなるのか、というところまで各クラブとは情報を交換していくつもりです」 公式試合安定開催基金の準備金として約10億円が計上されている。しかし、今後どのような事態が起こるかは予想できない。万が一、開催基金が不足するような場合に直面しても柔軟に対応していく意味で、冒頭で記した「財政的な検討をしつつ――」という、村井チェアマンの発言が出たのだろう。 実際に金額の見直しが行われる場合は、各クラブの代表取締役社長らで構成される実行委員会での審議で十分な理解を得た上で、最高議決機関である理事会の承認マターになってくる。また、選手が結んでいる契約書のなかには、タイトル獲得などに対して報酬が明記されているケースが少なくない。 いわゆる特別ボーナスが支払われる場合の原資は、ほとんどが優勝賞金となる。そうした事情を踏まえた上で、もし見直しに着手する緊急事態を迎えたとしても「プレーヤーズファーストの部分は、しっかりと踏まえた上で検討していきたい」と、村井チェアマンは厳守するべき精神を強調する。 主要プロスポーツ界で初めて公式戦開催を延期した先月下旬から、村井チェアマンは感染拡大の一途をたどる新型コロナウイルスを「国難」と位置づけていた。経験したことのない非常事態であり、なおかつ終息する気配も見せないからこそ、あらゆる状況を想定しながら先手、先手で対策を講じていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)