“涙の叫び”が心に響く…怪作「七夕の国」最終回 細田佳央太“ナン丸”「この世の広さを分かってない!」
細田佳央太が主演を務めるドラマ「七夕の国」の最終回となる第10話が8月1日に配信された。丸神の里(丸川町)の人々が敬いつつ、畏(おそ)れる丸神頼之(山田孝之)が「悪夢を終わらせる」と言っていた謎。頼之の登場を待ち構える丸神教授(三上博史)やナン丸(細田)から目が離せなくなった。(以下、ネタバレを含みます) 【写真】人間とは思えぬ恐ろしい見た目に衝撃…山田孝之の怪演も光った頼之 ■役に立たない超能力を持つ平凡な大学生が主人公のミステリー 同作は、「寄生獣」で知られる漫画家・岩明均によるコミック「七夕の国」(小学館刊)を実写化。物に触れずに小さな穴を開けるという役に立たない“超能力”が、実はある地域の一族に伝わるものでその能力を開花させた大学生・南丸洋二(通称:ナン丸)を主人公に、不気味な超常ミステリーの物語が繰り広げられる。 主人公・ナン丸を細田が演じるほか、ナン丸が訪れる里で暮らす東丸幸子を藤野涼子、幸子が恐れる兄・東丸高志を上杉柊平、ナン丸と共に謎を追う大学の助教授・江見早百合を木竜麻生、ナン丸が通う大学の教授で失踪してしまう丸神正美を三上、そして山田が多くの謎を持つ頼之に扮(ふん)した。 ■丸神の里に伝わってきた“怪奇”が明らかに 丸神教授の研究により、丸神の里で神聖な山とされる丸神山を中心にした周囲の地形が作られたものだということが分かった。ただ確かな記録はないため推測を交えての話では、1000年ほど前に、この地に“カササギ”と丸神教授が仮称した生命体が現れた。カササギは今でいう宇宙人のようなもの。 日本の国民は、八百万(やおよろず)の神を信じる。不思議な力を持ち、異形の姿は“神”のように思えたのだろう。人々から崇められるようになったカササギたちは、定期的に現れる。その舞い降りた地というのが、ヘリポートのように山頂部分が平らになっている丸神山なのだ。丸神の里の祭りは、神を迎えるため。やがてカササギが現れなくても、心待ちにする気持ちから祭りは続き、今に至ったと考えられた。 しかし、丸神教授は幸子に問い掛けた。「町の人々が、君が、山を守らねばという気持ち。それが本当に“ヤツら”を敬う心からなのかどうか」幸子の答えは、少し前に丸神教授が言っていた「見えない鎖」のせいだと。 カササギは、丸神の里を入植の候補地あるいは実験地としていたのではないかと考えられた。自らの血を交配して、のちの頼之やナン丸のような不思議な力を宿す“手がとどく者”が生まれ、恐怖や孤独感が植え付けられた幸子たちのような“窓をひらく者”が現れることに。カササギは、それを武器に人々を土地に縛り付けたのではないかということだった。 ■ナン丸、魂の叫び この土地を捨てたか、あるいはカササギたちが滅んだか。いずれにしても現れなくなって数百年たち、もう期待は持てない。最大の力を持ち、神官となった頼之も同じように考えたはず。ナン丸たちに一通りの説明をした丸神教授は、頼之は丸神山に現れると待つことに。丸神教授は、頼之の目的はすべてのカタをつけるため「自らがこの丸神山を消滅させること」だというのだ。 その通りに頼之は現れた。国の命令で頼之を消すためにやって来た武装隊に紛れて。武装隊を亡き者にした頼之は、たどり着いた己の考えを語る。備わった能力で生み出す巨大な黒い球体は、“窓”ではなく、“玄関”だったのではないかと。「向こうから迎えに来ないなら、こちらから出向く」と、丸神山の頂上で巨大になった黒い球体へ飛び込むつもりの頼之。すると、能力に苦しみ、ずっと悩んできた幸子も付いて行こうとする。 頼之のほうに手を伸ばす幸子の手をつかんで引き止めたナン丸は、泣きながら叫ぶ。 「みんな…この世の広さを分かってない!広過ぎて、広過ぎて掃除すんのだって大変なんだよ。世界中のこと、ネットやらテレビで分かったってそんなの全部うそだからな!世の中、誰も気付かないほんの小さな場所にだって、いろんな人の思いや知恵や失敗や、やり直しが詰まってるんだよ。この世界は目で見えている大きさの100倍も1000倍も広いんだ」 幸子たちが苦しんできたことは、広い世界から見ればごくごく一部のこと。ナン丸の言葉には、希望があり、普遍的なこととして、心に響いた。広い世界に飛び出せば、新たな未来があるはずだ。 ■「よく映像化できたなぁ」の声 日本の民俗学、風土的なものを取り入れた謎を組み込んでSFに仕上げた面白さがあり、“怪作”ともいわれた原作の世界をほぼ忠実にドラマ化した本作。 最終話のクライマックスは、頼之が考え通りに黒い球体に自ら入り込んだ。どんどん大きくなる黒い球体、頼之を飲みこみ、やがてパンという音と共にはじけ、丸神山の頂上がえぐられる。VFX技術を使った再現は、迫力に満ち、映像化の醍醐味(だいごみ)が存分に味わえた。 そして、この物語を若手ながら確かな演技力でけん引した細田、圧倒的存在感で世界観を引き上げた山田と三上もさすがだった。 SNS上には「独特な世界観のSFサスペンスで見応えあった」「配役が絶妙」「各人の演技がハマってて良かった」「120点の出来だった」「原作愛があるドラマだった」「よく映像化できたなぁって。めちゃくちゃ凄かった」「最終話の映像はとくに綺麗だった!!」といった感想が上がっている。 「七夕の国」(全10話)は、ディズニープラスのスターで独占配信中。 ◆文=ザテレビジョンドラマ部