生物多様性を守るため民間に何ができるか 大阪でシンポ
生物多様性を守るため民間に何ができるか 大阪でシンポ THE PAGE大阪
生物多様性を守るために、民間に何ができるかを考える「生物多様性民間参画シンポジウム」(主催・環境省、共催・大阪府、大阪市など)が27日、大阪市浪速区の大阪府立大学I‐siteなんばで開かれ、研究者やNPO関係者、ビジネスパーソンらが参加した。企業の先進的取り組みが確実に成果をあげる一方、生物多様性保全活動のすそ野を広げるには今少し時間がかかりそうだ。
「一杯のコーヒー」で生物多様性保全に貢献
国際自然保護連合日本委員会幹部による生物多様性の民間参画をめぐる国際的な動向に関する講演、環境省と大阪府の施策紹介に続いて、生物多様性保全活動を展開する3社1団体の先進的事例が、それぞれ担当者から報告された。 住友商事グループはアフリカ・マダガスカルの世界最大級のニッケル鉱山開発事業に伴い、鉱山周辺に希少生物保護のための緩衝地帯を設置するなど、大規模な生物多様性保全活動に取り組んでいる。 同時に渡り鳥の生息地保護を目的とするバードフレンドリー認証コーヒーを販売。だれもが「一杯のコーヒー」を選んで飲むことで生物多様性保全に貢献できると、市民に分かりやすくアピール。こうした生物多様性保全活動は明治期、荒れた森林を植林で復活させた住友創生期からの事業精神「自利利他・公私一如」がバックボーンになっているという。
都心に棚田を作ると幻の鳥も飛来する
武田薬品工業は京都薬用植物園の取り組みを報告。同植物園は薬用植物の保全拠点園として、絶滅危惧種などの種子や苗を育成し、自生地に植え戻しができる状態を目指す。漢方薬の原料として輸入されている甘草は、乱獲や土地の砂漠化などで野生種の絶滅が懸念されている。同植物園では研究開始から19年を経て、栽培品種の開発に成功。現在、国内での生産栽培に向けた実用化研究が進む。 小学生と保護者を対象に環境教育を実施。植物にふれたり匂いをかぐ五感優先クイズでは、保護者よりも子どもたちの正解率が高いそうだ。 積水ハウスは本社を構える大阪市北区「新梅田シティ」で取り組む「新・里山」プロジェクトを紹介。「新梅田シティ」は都心の観光名所でありながら、郊外の里山のように棚田や畑、池などが一体となって造成され、多くの生き物たちのすみかとなっている。 2013年には、ひと目にほとんどふれず幻の鳥と呼ばれるミゾゴイが飛来し、1カ月半滞在。今年からは絶滅 危惧種の植物ミズアオイの育成が始まった。里山で暮らす1羽のシジュウカラが1年間で食べる毛虫は10万匹以上。野鳥は多くの害虫を捕食し、過剰な薬剤散布を抑える効果があるという。 日本建設業連合会では「建設業の環境自主行動計画」を策定し、生物多様性保全に向けた活動を推進している。建設業は自然とのかかわりが深い。生物多様性保全に関して業界内外への啓発活動を進めるとともに、建設現場で働く建設技術者の認識を高め行動を喚起していくことが課題となっている。