大阪万博が盛り上がらなくても9年前は…ミラノ万博の「日本館」が“行列9時間の超人気パビリオン”になった納得の理由
開幕当時は会場全体に閑古鳥
もっとも、最初からこれほど賑わっていたわけではない。5月1日に開幕した当初は、訪れた協賛企業の社員によれば、 「まだ各所で工事をしていて、閑古鳥が鳴いていました。主催国イタリアは、10月末までに2000万人を集めると息巻いていましたが、誰もが無理だと思っていましたね。イタリア人に聞くと、準備が整うまで控えていたという人が多いんですが、日本館だけは、5月中から1時間ほど待つような状況だったんです」 日本館は万博会場の正面入り口から最も遠いエリアにある。過去の万博で多くの来場者を集めた実績を買われ、広い敷地を与えられる一方、遠くても人が集まるだろうからと“遠隔地”に配置されたという。そこに来場者が押しかけるにいたる経緯を、日本館の広報チーム長補佐、尾高健氏が振り返る。 「真夏も暑すぎましたから、最大でも2時間待ち程度でした。熱中症で倒れる方もいましたしね。それが9月以降、どんどん列が長くなったんです。当初は1時間の列でもあきらめる人が多かったのが、最近は列が列を呼び、待つのが嫌いだといわれるイタリア人が礼儀正しく並んでいる。朝、開門と同時に日本館めがけて走る方も多いです」
3年間議論を重ねた展示内容
ちなみに、約140カ国が参加する110ヘクタールの会場で、人気のパビリオンは日本に加え、主催国イタリア、ドイツ、カザフスタン(2017年に会期3カ月の認定万博を開催)、UAE(20年の開催国)だが、2番人気のイタリア館で待ち時間は最長6時間程度、ドイツ官は4時間程度だから、日本の人気は圧倒的というほかない。 それにしても、なにを目的にこれほど多くの来場者が集まるのだろうか。ミラノ万博のテーマは「地球に食料を、生命にエネルギーを」。要は「食」である。加藤政府代表が語る。 「食がテーマの万博で日本が何を発信するか、農水省と経産省も交えて3年間議論を重ねました。TPP交渉の影響がおよぶ中、日本の農林水産業の競争力を高めるという課題を抱える農水省は、食文化の発信から地方創生につなげたい。クールジャパンを推進する経産省は、食に関わる伝統産業を訴えたい。多くの案を50分前後で見られるようにまとめ、展示だけでなく、あっと驚くインタラクティブ(双方向)な演出を工夫しました。展示のあとにはレストランと、各自治体や団体が食に関わる持ち込みイベントを行う広場を設置。全体にJAグループの協力は大きかったですね」