カップ麺が出来る時間で料理する巨人“8回の男”上原浩治のプラスアルファ
元巨人で代走のスペシャリストとして活躍した鈴木尚広氏は、上原の加入には3つの効果があるという意見を持っている。 「投球のテンポが非常にいい。サインを出したら、もう投げているというようなハイテンポです。しかも、ストライク先行型でどんどん打者に対して攻めていくので、球数も少なくゲームが締まるのです。それは上原さんが、投げ終わったあとのチームの攻撃リズムにもつながります。野手は、どうしても長く守るとバッティングに悪影響が出てしまうものです」 超ハイテンポで打者が圧倒されて上原に支配されるのと同時に、その“カップ麺ピッチング”は味方の攻撃面にも好影響を与える。第2戦では上原が登板した、その裏にリードを広げる岡本の3ランが生まれた。上原がハイテンポで作ったゲームのリズムと無縁ではなかったのかもしれない。 「もう一つの上原さんの効果はチームのムード作りでしょう。登場するだけで球場の盛り上がりが違いますし、ハイタッチはベンチ内を明るくします。目に見えないプラス面が出てきますね」と鈴木氏。 上原はベンチに帰るとハイタッチの嵐。「そういうスタイルでやってきているので変えることはできない」。この日は、ランニングスローを決めたマギーを待ってグラブタッチ。上原の前のイニングをきっちりと締めた“7回の男”沢村拓一に“チョップ”をお見舞いするのがすでに巨人の恒例儀式のようになった。メジャー時代から上原がやってきたハイタッチにベンチがおおいに盛り上がり鼓舞されるのである。 「上原さんの加入、そして沢村が復活していることで、ブルペンが厚みを増しました。抑えはカミネロになっていますが、ベンチは、調子などを見ながらマシソン、カミネロと選択肢が増えます」 鈴木氏が指摘する3つ目の効果はブルペンの充実。 上原がいるから復活した沢村を前倒しで起用することが可能になりベンチに迷いが消える。この日、先発の野上亮磨が、6回に二死一、二塁のピンチを迎えると、大山悠輔の打席で沢村にスイッチした。その沢村は変化球を駆使した投球術で一打逆転の場面をしのいだのである。 また、この3連戦では、結果的にセットアッパーのマシソンを温存することができた。143試合の長丁場を考えるとき、上原が“7回の男”になるのか、“8回の男”になるのか、で、ブルペン陣の疲弊を軽減することができるし、逆に上原を休ませることも可能になるだろう。 また先発陣に不安が生まれるのならば、マシソンやカミネロに代えて、新外国人のヤングマンを登録して先発で使うというオプションまで可能になる。 お立ち台で上原は、「便利屋でやります。どこでもやります」という自己犠牲の精神を持ってチームに貢献する考えを表明していた。 高橋由伸監督と生年月日が同じの大ベテランが率先して「便利屋」を宣言するとなると、ベンチで横を向くような選手は一人もいなくなる。今年の巨人は強いのかもしれない。