「大内塗」継承に意欲 地域おこし協力隊の若者2人【山口】
山口市版地域おこし協力隊の金子祐樹さん(29)と津村真衣さん(25)が、市の伝統的工芸品「大内塗」の技術習得に励んでいる。昨年6月に着任し、2年目を迎えた若者2人は、先輩職人の指導を受けながら伝統の継承に向け、腕を磨いている。 現在は、大内塗漆器振興協同組合に所属する中村民芸社(中村建代表)で漆の上塗りを中心に学ぶ。昨年は盆など円形の器だったが、今年は箱形に挑戦。塗った漆で凹凸になった部分を研いで平らにし、再び塗る作業を繰り返している。中村代表(53)は「円形より箱の方が難易度が高い。いろんなものを塗る経験を蓄えると考える力が付き、今後の作品への応用が利く」と重要性を指摘する。 はけの通し方や気候で状態が変わる漆の扱いが難しいという金子さんは「今は時間があるが、最終的には仕事になるので、効率的に数をこなすためには、丁寧に進めながらどういう工夫が必要かを考えてやっている」と話す。 最後の仕上がりに大きく影響する事前の準備として、塗る前に漆を紙でこしてごみ取りやはけのちりを除く作業も重要だ。津村さんは「今まで表面的にしか見えなかった作業の重要性が分かった。少しずつ事前の準備はスムーズになってきた」と手応えを感じている。 2人は、技術指導の時間以外にも自己研さんに励む。木地師でもある金子さんは、塗りの準備作業の向上はもちろん、大内人形の木地や木工作品の製作に精進。津村さんは県立大時代に考案した大内塗のリングホルダーの作成に加え、新商品として招き猫の試作に取り組んでいる。 同制度の任期は5年間で、来年以降はさらに習得が難しい蒔絵(まきえ)の指導も始まる。修行について2人は「面白い」と口をそろえる。金子さんは「知らないことを学べるのは楽しい。協力隊制度のおかげで金銭的な支援もある。素直に楽しんでチャレンジしたい」、津村さんは「ニーズには変化があるので、自分が作るものに価値が付けられるか。決して長くはない5年間で学んでいきたい」とそれぞれ意気込みを示した。 今月23、24日午前10時~午後4時には山口ふるさと伝承総合センターで大内塗・大内人形まつりが開かれ、2人を含む同組合の作品展示や、大内塗の箸作りと人形の絵付け体験を行う。