中日・福谷浩司がFA権行使 残留の目は球団の「ビジョン」提示にあり?
中日・福谷浩司が国内FA権行使を決断したという。11月13日付の『中日スポーツ』『スポーツ報知』がスクープ。同日中に加藤宏幸球団本部長が事実である旨を明言し、宣言残留も認める方針だ。 【動画】スタジアムを熱狂させた待望の一発!ビシエドの今季1号ホームランを見る ■地元出身のインテリ右腕 福谷は地元・愛知県出身の右腕で、慶應義塾大から2012年ドラフト1位で入団。 球界を代表する理系インテリとして知られ、卒業論文のテーマは「投球動作における球の出所の見づらさの定量化」。直近では登板後の『note』更新がファンの好評を呼び、今オフはウインターリーグ挑戦記を自身のYouTubeでVlog方式にして公開。野球とテクノロジーへの興味探究が旺盛である。 投球スタイルはインテリのイメージとは異なり(?)、150キロを超えるボールをがんがん投げ込む速球派。最初はリリーフで頭角を表し、プロ2年目の2014年にはリーグ最多の72試合に登板。32ホールド11セーブを挙げた。その後は不調や故障で成績が低下するも、2020年に先発として復活。翌21年には自身初の開幕投手を担った。 今季はシーズン終盤に1軍登板の機会を得て、3勝を記録。日本一のDeNAを相手に、自らの決勝打で白星を手にする試合もあった。 ■球団にビジョンはあるのか、問いかける 地元出身のドラフト1位、かつ屈指のインテリ。おそらく球団は戦力であると同時に、将来の幹部候補生として評価する一面も持っているだろう。 話題を呼んだのが2020年オフの契約更改。福谷が交渉の場で「来年以降のチームをどうしたいのか」と、球団幹部に将来のビジョンを問いかけた。幹部はそれに明確な回答を持ち合わせておらず、契約がまとまらなかった経緯がある(※その後の交渉でサイン)。 当時から福谷は「若い選手がモチベーション高く契約を全うできるか」を考えて交渉に臨んでおり、昨オフの契約更改でも同様のことを話していた。今回の権利行使は自身が「他球団の話を聞きたい」旨が主たる目的と思われる中、球団側が中長期的なチームプランを持ち出せるかが一つのポイントになりそうだ。 ■獲得に動きそうな球団は? 他球団にとっては「年俸2000万円のCランク、先発・救援で実績のある、来季34歳シーズンの右腕」が市場に出ることになる。付随して、頭脳明晰、後輩への面倒見の良さで人柄面も問題なく、将来の指導者・幹部候補生になり得る。そう評価される場合、獲得に動く球団があるか。 まずは純粋に、投手の層が薄い球団は動いてもおかしくないのではないか。具体的にはヤクルト、楽天あたりが候補か。他に先発投手でFA市場に出るのは石川柊太(ソフトバンク)、九里亜蓮(広島)。彼らを獲れなかった球団が「プランB」として考えるのも想像に難くない。 中日にとっては貴重な先発投手、かつ将来にわたり球団を支えてくれそうな人材をみすみす手放すわけにはいかない。一方でこれまでの福谷の言動を見聞きしていると、もっと広く球界に貢献してほしい気持ちも否定できない。複雑な思いを抱えながら、今後の交渉を見守ることになる。 [文:尾張はじめ]