北海道胆振東部地震から6年 農地全域が復旧 農家と自治体、密な連携で
北海道JAとまこまい広域管内の厚真町幌内沢地区で5月下旬、2018年の北海道胆振東部地震の土砂置き場となっていた農地が復旧し、田植えが行われた。同地震では、農家が農地を土砂置き場などとして貸し出したことが地域の復興に大きく貢献。最後の復旧となった農地で、高橋宥悦さん(59)と長男の健太さん(31)親子が期待に胸を膨らませて作付けを再開した。 地震があったのは18年9月6日未明。同地区では家屋や倉庫への被害に加え、農地に土砂が流入する被害に見舞われた。 JAによると、地震による管内の被災農地は約161ヘクタール。このうち約25ヘクタールは砂防ダムとなり、農地ではなくなった。残る農地約136ヘクタールを復旧しようと、地元農家と国、道、町などの行政・自治体が密に連携してきた。 その後、復旧は迅速に進み、20年の営農開始時期までに大半の農地が復旧。残る面積も毎年少しずつ復旧し、今年、ようやく全面積が復旧した。 復旧が早く進んだ理由についてJAは「地元農家が復旧工事のために農地を土砂置き場や作業道路利用のために提供したことが、早期の復旧につながった」と説明する。 JAも震災直後から収穫、出荷の代行、畜産農家への発電機貸し出しや給水などの支援を実施。災害復旧復興事業や、経営・営農技術のサポートプロジェクトを立ち上げ、JAや行政などが窓口となりながら支援してきた。災害関連資金として低金利での貸し付け、収穫できず農作物をすき込んだ農地の施肥指導など、細やかな施策で農家を支えた。 高橋さん親子は震災後、残る限られた農地で高収益のメロンやカボチャなどを栽培し、復旧を待った。今回、ようやく7ヘクタールの農地が戻ってきた。 幌内沢地区では震災の影響で6戸から4戸に農家が減少したが、離農した人の農地の一部は高橋さんが後を継ぎ、耕作する。 6年ぶりに青々とした苗が水田に植えられると、健太さんは「ようやく面積が戻ってきてうれしい」と満足そうに話した。土砂置き場となっていたので圃場(ほじょう)には石があったが「機械で除去してもらい、作業は順調に進んだ」と説明する。
日本農業新聞