同僚が「土地を相続したけど売れなくて、固定資産税を払い続けててキツイ…」と言っていました。売れない土地を相続した場合、どうしたらよいのでしょう?
制度利用希望者も増加傾向に
2023年からスタートした制度のため、現在までに引き取りが決まった件数は、全国で200例ほどに過ぎません。しかし、法務局によるPR活動も行われているため、誰でも気軽に利用できるという環境が整いつつあり、相談件数は増えつつあります。 実際に引き取りが確定したケースのうち、50%ほどが宅地で、農地は約25%程度、山林は5%にもなりません。宅地が多いということは、都市部で利用されない土地が増えていることを伺わせる内容になっています。 審査期間が少なくとも半年はかかることも、まだ成約件数が少ない理由の1つといえます。制度の周知化がさらに進めば、引き取りの件数も今後増えていくと思われます。 国の引き取りを希望する土地がある場合、まず法務局の窓口に相談に行きます。この事前相談には予約が前提ですが、何回でも無料で相談できます。条件などをクリアし引き取りが認められそうであれば、その段階で審査手数料として1万4000円を法務局に納付します。別の土地の引き取りも希望する場合は、1件ごとに同額の手数料を支払います。
国に支払う負担金は20万円以上
審査手数料が納付されると、法務局による審査が正式に始まります。この時点で、該当する土地のある地方自治体に、審査情報が提供されます。法務局の担当者による実態調査を経て「問題なし」と判断されれば、正式に引き取りが確定します。この後に負担金を納付すれば、該当の土地は国庫に帰属します。 負担金の金額は、市街化区域以外にある宅地と農地の場合、一律20万円です。市街化区域の土地の場合、面積等を考慮し算定されます。計算式に当てはめて算出されますが、面積が広いほど金額は高くなります。 例えば、100㎡の宅地で負担金は約55万円になり、決して安い金額ではありません。この審査期間中に、土地のある地方自治体への情報提供がされるため、地方自治体が利用可能と判断すれば、寄付の形で受け入れに動くケースもあります。 とくに市街化区域の土地を、公園用地などに活用できれば、自治体としても好都合です。無償提供になりますが、国に引き取ってもらう場合に比べて、負担金がないというメリットがあります。また民間の不動産会社などでも、この情報を収集し、無償あるいは安い価格で引き取るケースも出てきました。 制度がスタートとして約1年、試行錯誤の状態が続いており、多くの国民に制度として周知され活用を考える方が増えるかどうかは、未知数の点が多いかと思われます。 出典 法務省 相続土地国庫帰属制度について 執筆者:黒木達也 経済ジャーナリスト 監修:中嶋正廣 行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者
ファイナンシャルフィールド編集部