“きょうだい児”として我慢を重ねてきた長女の「涙のひと言」に頭を殴られたような衝撃を受けた母が取った行動とは?
誰かを大切にできるのは、誰かから大切にされた人
そして、あの時、娘に気づかせてもらいました。 大好きや愛してる、大切なんだという気持ちは、親子だから、家族だから伝わっている――それは決して当たり前じゃないんだということを。だからちゃんと声に出して、抱きしめて、ちゃんと形にして伝えなきゃいけないんだということを。そして、優しくされた人は、人に優しくできる。褒められた人は、人を褒めることができるということを。 家族なんだからとか、言わなくてもわかるとかじゃなくて、大切な家族だからこそ、大切な気持ちをちゃんと伝えなくちゃいけない。だからこれからも、大好きなキミたちに思いを伝え続けていこう――そう思っています。 奈美にも良太にも、姉弟なんだから仲良くしなさいとは、一度も言ったことがありません。 奈美と良太の仲の良さは「仲良くしなさい」と言われたからではなく、自分は大切に思われている、愛されていると、それぞれが感じていたからだと思います。気がつけば、奈美は良太のことが大好きで、良太は奈美のことが大好きで、お互いがお互いのことを大切に、支え合う姉弟になっていました。 人は、人から大切にされると、人を大切にできる人になるんだ――奈美と良太から教えてもらいました。 もしあの時、奈美が私に泣いて訴えてくれなかったら、私は奈美に寂しい思いをさせ続けていたのかもしれません。奈美は良太のことを嫌いなまま生きていたのかもしれません。 2人のことが大好き、そんなのわが子だから当然。言わなくても伝わっている、家族だから当たり前。私は無意識に、勝手にそう思い込んでいたのでした。 でも本当はそうではなかったのです。
一番近くにいる大切な存在だからこそ、ちゃんと伝えなければいけません。だから私は今も、伝えたい気持ちは必ず大げさくらいにして伝えています。「伝わっているはず」ではなく「ぜったいに伝わっている」と確信できるくらいに。大切な気持ちは、それくらいでようやく伝わるものなのかも知れません。 とかなんとか、偉そうに書き連ねましたが、姉弟の仲の良さは私がそうしてほしいと努力した賜物ではなく、あの時、奈美の泣きながらの訴えが功を奏したものでした。 あの時の幼い奈美にもう一度、ありがとうを言いたいと思います。
デイリー新潮編集部
新潮社