「いまだに教義の影響から抜け出せない」山上被告の元に届く、宗教2世たちからの手紙 にじむ苦悩とトラウマ、共感も…読んだ被告も気にかける
大阪拘置所に勾留されている1人の被告の元に、見知らぬ人々からの手紙が寄せられている。「親の献金でお金がなくなった」「家族が壊れた」。そんな切実な思いをつづったものもある。 旧統一教会が「改革」を強調する裏で飛び出した韓鶴子総裁の「日本賠償」発言 内部からも疑問の声 本当に変われるのか?
受取人は、安倍晋三元首相銃撃事件で、殺人などの罪で起訴された山上徹也被告。差出人は、宗教の信者を親に持つ「宗教2世」の人たちだ。関係者によると、境遇が似た被告に自身の苦しみを伝える内容が目立ち、被告は返信していないものの、気にかけて読んでいるという。 宗教2世の中には、親が信じる教義に翻弄され人生を狂わされた人も多い。京都府立大准教授の横道誠さん(44)もその1人。銃撃事件の前から当事者同士の自助グループを主催し、それぞれの苦悩に向き合ってきた。 「いまだに教義の影響から抜け出せない」 当事者たちが語るトラウマに、自身の経験が重なる。事件を機に2世の存在は広く認識されたかもしれない。ただ、当事者への理解や相談の受け皿づくりはまだ不十分だと感じている。(共同通信=大河原璃子) ▽生い立ち 横道さんが小学校低学年の時、父が不倫して家を出たのをきっかけに、母が「エホバの証人」に入信。頻繁に集会へと連れ出されるようになった。当時はじっとしていられず動き回ることが多く、母は「しつけ」と称して、家でたびたびガスホースやベルトで殴って矯正しようとした。
教団ホームページには聖書の言葉としてこんな文章が掲載されている。 「むちを控える人は子供を憎んでいる。子供を愛する人は懲らしめを怠らない」 横道さんによると、このような言葉が影響し、「むち打ち」が習慣化していた信者もいたという。 母は殴った後に「愛しているからやっているんだ」と抱きしめる。横道さんは「認知がゆがみ、心が壊れた」 しばらくして離人症を発症し、殴られる自分を幽体離脱して眺める感覚に陥るように。小学校でのいじめにも苦しんだが、家で母と過ごすのも恐怖を感じ、教室を抜け出しては街をさまよった。 それでも母を喜ばせたい感情が勝り、教義の勉強に打ち込んだ時期もあった。しかし、学べば学ぶほど内容に不信感を抱くようになり、中学生の時、集会に行くことをやめた。自分が感じた「教義の矛盾」を母に語り続けたが、聞く耳を持ってもらえなかった。 そのうちに諦め、大学在学中に家を出た。それから母と連絡を絶っている。