「いまだに教義の影響から抜け出せない」山上被告の元に届く、宗教2世たちからの手紙 にじむ苦悩とトラウマ、共感も…読んだ被告も気にかける
▽自助グループ やがて大学で教壇に立つようになった横道さんは、「エホバの証人2世」だと知られることを恐れ、長年隠し通してきた。 だが4年ほど前、うつ病、発達障害と相次いで診断されたことが自分のパーソナリティーを見つめ直すきっかけとなり、宗教2世の立場をカミングアウトすることを決意。自らの体験や苦しみをインターネット上などで発信するようになった。 2020年には「宗教2世の会」を立ち上げた。月1回オンラインで10人ほどがつながり、解決の道を探っていく場となり、これまでに高校生から60代まで延べ400人近くが参加してきた。 ▽参加者の悩み 2世の会の参加者が抱える悩みは多岐にわたる。 「虐待がフラッシュバックする」 「行動を制限されてきたせいで社会になじめない」 経済的な問題もその一つだ。献金による家庭の困窮をはじめ、「親と絶縁したため保証人がおらず、住宅物件の賃貸契約が結べない」「宗教の影響で進学を制限されたため仕事に就けない」といった切実な声が多い。
こんな不安を抱える参加者もいる。 「離れたはずの宗教の価値観が、自分の人格の一部を形成しているのではないか」 ある女性は、人間関係をうまく構築できない時などに「いまだに宗教が自分に影響し続けている」と感じるという。別の男性は「大嫌いな宗教にずっとストーカーされている気分だ」 こうした不安の根底には、教義を教え込む親に価値観や思考を矯正された幼少期の境遇があると横道さんはみる。社会的なマナーや常識を教えるための一般的なしつけとは異なり、簡単には抜け出せないという。 ▽自殺未遂 2世の会の参加者に、壮絶な過去を明かしてくれた人がいた。設立当初から参加し、介護支援専門員や社会福祉士として働く平出明彦さん(49)だ。 横道さんと同じく、幼い頃に母がエホバの証人に入信し、「お祝い事を禁止されてクリスマスを祝えなくなり、サンタさんからのプレゼントも来なくなった」。友達との交流も制限され、「集会に行きたくない」「遊びに行きたい」と反発すると、おしりを革のベルトでたたかれた。楽しみも自分の主張も否定されて「このまま生きていても楽しくない」と絶望。小学5年の時に自殺未遂を起こしたこともある。