【公演レポート】「DEATH TAKES A HOLIDAY」開幕、死神役の小瀧望が語る“最高のホリデー”とは
小瀧望が主演を務める「ミュージカル『DEATH TAKES A HOLIDAY』」が、本日9月28日に東京・東急シアターオーブで開幕。これに先駆け昨日27日、ゲネプロと囲み取材が行われた。この記事ではゲネプロの様子をレポートしているため、ネタバレを避けたい読者は注意してほしい。 【写真】劇中のタップの振付を披露する小瀧望。 本作のもとになっているのは、イタリアの劇作家アルバート・カゼッラが1924年に発表した戯曲「La morte in vacanza」。1929年には「Death Takes A Holiday」として英語で戯曲化され、1934年に同タイトルで映画化(邦題「明日なき抱擁」)された。また1998年にはブラッド・ピット主演で映画「ジョー・ブラックをよろしく」としてリメイクされている。本作のオフブロードウェイミュージカル版は、ミュージカル「TITANIC」で知られる脚本のピーター・ストーンと作詞・作曲のモーリー・イェストンにより誕生。2011年にオフブロードウェイで初演され、日本では昨年、宝塚歌劇団により上演された。今回は宝塚版と同じく、潤色・演出を生田大和が手がける。 舞台は第一次世界大戦後の1920年代初頭、イタリア北部。山道を走る車には、娘のグラツィア(山下リオ、美園さくら)の婚約をヴェニスで祝った帰りの、ランベルティ公爵一家が乗っていた。突如“闇”にハンドルを取られた車はスピンし、グラツィアは車外に投げ出されるが、大事故にもかかわらず彼女は無事だった。同じ夜遅く、死神(小瀧)がランベルティ公爵を訪ねてくる。死せる魂を1人であちら側へ導き続けることに疲れた死神は、ロシア人のニコライ・サーキの姿を借り、公爵一家と共に2日間の休暇を過ごそうとするが……。なお昨日のゲネプロでは、山下がグラツィア役を務めた。 ステージには、卵の黄身のように黄色い満月がぽっかりと浮かぶ。舞台は袖幕の代わりに、雲をデフォルメしたようなもくもくとした形のパネルに縁取られている。パネルは開閉式となっており、そこに映像が映し出されることで、舞台は湖畔や洞窟、飛行機が飛び交う戦時中の上空などに次々と様相を変えた。 小瀧は明るい歌声で、サーキの肉体を借りた死神が“生きる”ことを知った喜びを表現。初めて目玉焼きを食べるシーンでは幸せそうな表情を浮かべ、食べることの楽しさを伝えた。グラツィアと恋に落ち、生きる喜びを味わう死神だったが、物語が進むにつれて彼は、人間が抱える喪失の悲しみや孤独感、自己犠牲の精神などに触れ、生の苦しみをも知っていく。死神の揺れ動く心情を、小瀧は情感のこもった歌声で繊細に表した。 グラツィアは夢見がちだが意志が強く、こうと決めたら譲らない人物。また疾走する自動車から身を乗り出し、スリルを楽しむような一面も持っている。山下は大きな瞳を輝かせて歌い、グラツィアのサーキへの一途な思いを描き出した。また飛行機乗り・エリック役を演じるのは東啓介。戦争中、周囲のパイロットが次々に死神に連れていかれるさまをエリックが回想するシーンで、東はパワフルだが悲痛な歌声を聞かせ、観客を惹き付けた。 ゲネプロ後の会見には小瀧、山下、美園、潤色・演出の生田が登壇。小瀧は「さまざまな要素が凝縮されていて、過去一でいっぱいいっぱい(笑)」と話す。多忙な中で本作への出演を決めた理由について、小瀧は「僕はコンサートや舞台といった“ライブ”が大好き。9月はタイトスケジュールになることはわかっていましたが、生の舞台が大好きなので迷わずお受けしました」と言い、続けて「今も『この作品をやれて良かった』と思っています。精一杯命を燃やしてがんばります」と言葉に力を込めた。 ミュージカル「ファントム」以来、約10年ぶりのミュージカル出演となる山下は「久しぶりのミュージカルなので初めは気負って苦戦していたけど、今はだいぶ気持ちが解放されてきて、自分らしくやろうと思えています」とコメント。元宝塚歌劇団月組トップ娘役の美園が舞台に出演するのは、2021年の退団以来、約3年ぶり。美園は「緊張していますが、小瀧さんがドンと構えていてくださるので安心しています。小瀧さんの魅力に身を任せつつ、難しい楽曲の1つひとつをお客様にどう届けるか追求したい」と意気込みを述べた。 宝塚歌劇団でも本作を手がけた生田は「今回も作品の本質は変わらない」としつつ、「サーキは屋敷の部屋の1つひとつで、人生の要素を学びます。各部屋から物語が広がる様子をより丁寧に見せたい」と話す。小瀧が出演したミュージカル「ザ・ビューティフル・ゲーム」を観劇したという生田は「声の深さや役作りの細やかさ、客観的に作品を観ているところが魅力的で、“真ん中に立つ人”向きの資質をお持ちだと思います。僕も彼に助けられながら、楽しく過ごしてきました」と、小瀧に厚い信頼を寄せた。 取材では作品のタイトルにちなみ、出演者が“最高のホリデー”を語る場面も。小瀧は「姪っ子に会いたい。(自身の所属グループWEST.の)メンバーの名前を覚え始めたんです」とほおを緩ませ、昨年末に大型二輪の免許を取得したという山下は「私とグラツィアは『フウ! 死にそう!』という、スリルを好むところが似ています(笑)。安全運転で楽しみたい」と顔を輝かせる。また美園が「私の野望はこの4人でアフリカを冒険すること! 私たちなら月だって行けそうです」と登壇者たちに視線を送ると、ほかの3人は美園に一礼して固辞する意を示し、記者たちを笑わせた。 最後に小瀧は「“挑戦”がテーマと言っても良いくらい、歌やタップダンスなどいろいろチャレンジしています。出演者としては苦しんでいますが(笑)、素敵な楽曲に酔いしれ、魅力あふれるキャラクターの姿、豪華なセットや衣裳を味わってほしい。細部まで全身で楽しんでください」と観客にメッセージを送った。 上演時間は休憩を含む約3時間10分。公演は9月28日から10月20日まで東京・東急シアターオーブ、11月5日から16日まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールで行われる。 ■ ミュージカル「DEATH TAKES A HOLIDAY」 2024年9月28日(土)~10月20日(日) 東京都 東急シアターオーブ 2024年11月5日(火)~16日(土) 大阪府 梅田芸術劇場 メインホール □ スタッフ 作詞・作曲:モーリー・イェストン 潤色・演出:生田大和(宝塚歌劇団) □ 出演 死神 / サーキ:小瀧望 グラツィア:山下リオ / 美園さくら エリック:東啓介 コラード:内藤大希 アリス:皆本麻帆 デイジー:斎藤瑠希 ヴィットリオ:宮川浩 ステファニー:月影瞳 ダリオ:田山涼成 エヴァンジェリーナ:木野花 フィデレ:宮下雄也 ロレンツォ / 飛行教官:西郷豊 伊藤彩夏 / 井上弥子 / 岡施孜 / 蟹々々エミ / 上條駿 / 熊澤沙穂 / 篠崎未伶雅 / 鈴木亜里紗 / 高瀬育海 / 長澤仙明 / 丹羽麻由美 / 武藤寛 / 安井聡 / 吉井乃歌