「いやらしさを感じるバカはいない」設置当時の市長は驚き にわかに物議醸す“裸婦像”の行方 「時代遅れで今の時代にそぐわない」と静岡市長が苦言 中には印象派の巨匠・ルノワールの作品も
静岡市の中心部を歩いているとよく目にするものがある。それが裸婦像だ。この裸婦像をめぐって、難波喬司 市長は「時代にそぐわない」として展示場所を見直す考えを示唆。一方、設置した当時の市長は「未熟な感覚」と話している。 【画像】中心部を歩いていると”裸婦像”を目にする機会の多い静岡市
市の中心部に裸婦像 中には名品も
静岡市の中心部には彫刻作品が点在していて、少なくとも15体は裸婦像もしくは少女の裸体像だ。 中でもJR静岡駅南口の駅前広場にある「勝利のヴィーナス」像と「洗濯する女」像はフランス出身の画家・ピエール=オーギュスト・ルノワールの作品として知られている。 印象派の巨匠として名高いルノワールだが、晩年はリウマチ性関節炎に苦しみながらも彫刻の制作にも取り組み、当時は若手の彫刻家だったリシャール・ギノの力を借りながら、約15点の作品を残した。
市長が設置場所に疑問呈する
1994年に設置された静岡駅前の2つの彫刻像はいずれもルノワールとギノが手がけた原型から鋳造され、共に世界に14体しかない貴重なものだ。 こうした中、難波喬司 市長は「裸婦像自身は芸術作品なので、それ自身を否定するわけではない」と断りつつ、「時代遅れで今の時代にそぐわない」として展示場所を見直す考えを示唆。 自身がかつてフランスを訪れた際も公共空間で裸婦像を目にすることはほとんどなかったといい、「公共の開かれた目につきやすい空間に置くのではなく、作品の鑑賞環境に相応しい場所に置くのがよいと思っている。南口にあるルノワールの像については場所が適切ではないと思っている」との考えを明らかにした。
市長の杞憂?市民に話を聞くと…
一方、実際に静岡駅南口を行きかう市民に話を聞いてみると「(芸術作品として)すばらしいと思う」「(芸術作品を)なかなか見る機会がないのでよいと思う」と駅前の一等地に一流の芸術作品があることを評価する声や「何も考えたことはなかった。気にする人がいるんですね」「特に気にならない」といった声が多く、難波市長の杞憂にも思える。
設置当時の市長は思い入れ強く
そこで我々はルノワールの彫刻像を設置した張本人であり、当時の市長である天野進吾 氏のもと訪ねた。 天野氏によれば、静岡駅の南口を再開発するにあたって地元の住民から「記念碑を置いて欲しい」と要望があったことから、芸術文化が芽吹く街になってほしいとの期待を込めて記念碑に代わって彫刻像2体を1億2900万円で購入したそうだ。 設置から30年が経過する中で移設の議論が生まれたことには「裸婦像だから、どうこう言われるとは全く思っていなかった」と驚きの表情を浮かべ、「難波さんの物の考え方かもしれないが、そんな風に考える人は、政治家としてはそんなに多くないと思う。堂々と置けばいい」と主張。 ヨーロッパでは古くから裸婦像が多数描かれてきたとして、「『性的』と言うこと自体が未熟な感覚。『ヌードだから』と、いやらしさを感じるバカはいない」と、思い入れの強さから口調が厳しくなる場面もあった。 ただ、天野氏は「駅の入り口にという思いはずっと持っている」と話しつつ、「新しい図書館や文化的な施設の入り口に置くというのならそれもまたいい。奥にしまってしまうのはもったいない」とも口にしている。 市街地にある裸婦像の中には市民から寄贈され、制作者の思いに沿ってその場所に置かれている作品もあることから、難波市長は設置場所を見直す場合には有識者や市民の意見も聞いていく考えだ。 果たして一体どのような結論が導かれるのか…静岡市の“芸術”の行方が注目されている。 (テレビ静岡)
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