「世界の人に自分の料理食べて欲しい」ANA、機内食レシピコンテスト和食・製菓グランプリ決定
全日本空輸(ANA/NH)グループで機内食を手掛けるANAケータリングサービス(ANAC)は3月13日、従業員がメニューを考案・開発する「第9回レシピコンテスト」和食・製菓部門の最終選考会を成田空港近くの成田工場で開催した。全4部門のうち洋食と製パン部門は2023年10月に最終選考を終えており、今回の2部門で和食は成田工場和食調理部の石井啓太さん、製菓は羽田工場ペストリー部の中原祐基さんが最優秀賞を獲得した。最優秀作品は2024年度中に機内かラウンジで提供する。 【写真】ANAの機内食レシピコンテスト レシピコンテストは、調理技術の向上や人材育成などを目的として2014年度にスタート。コロナ影響で中止となった2021年度を除き毎年開いており、今年度は全4部門合わせて63作品の応募があり、13日の和食と製菓は5作品ずつ計10作品が最終選考に進んだ。 評価は「味覚」「見栄え」「独創性」「総合」の4つと、メニューを開発した出場者の「説明」を加えた5項目計100点満点で判断し、おいしさを評価する味覚は30点満点、説明は10点満点、そのほかの項目は20点満点ずつで採点。審査員はANACの石田洋平社長、清水誠総料理長、ANA商品企画部の黒田恭良担当部長ら16人が務め、試食しながら工夫した点などを出場者に尋ねていた。 和食部門のテーマは主菜となるオリジナル創作料理で、機内食としての提供を想定した予算以外の要求項目はなく、自由な発想によるメニュー提案を求めた。 最優秀賞を獲得した石井さんは、1メートルほどの大きさながら食べられる部分が少なく、料亭でも使われることが少ないという高級魚「アカヤガラ」を使った「赤矢柄のすーぷ餡掛け」を出品。冬に提供することを想定し「機内食に落とし込むよりは作りたいものを作りました」(石井さん)と話し、「お吸い物で使われることが多いですが、刺身や揚げ物にしてもおいしいです」と、衛生面などさまざま制約がある機内食から離れてレシピを考えたという。 製菓部門のテーマは、ANACオリジナルのチョコレート3種(ミルク・ダーク・ホワイト)を使ったデザートがテーマ。最優秀賞の中原さんは「柚子と洋梨のANAホワイトチョコムース」を出品した。コース料理では最後に提供されることから「さっぱり食べて欲しいので、酸味だけでなくクッキーやゼリーを使って食感にこだわりました」という。 審査を終えたANACの石田社長は「(乗客の比率で)日本人よりも訪日の方が多く、機内食もそうしたところを意識しなければというのもある。コスト削減努力をしていく中で、いかに喜んでいただけるかだ」と述べた。 和食のグランプリとなった石井さんは「和食部門みんなの協力あってできたもので、僕だけの力ではありません。和食や料理の勉強に精進したいです」とあいさつ。製菓の中原さんは「成果が出せましたが、これをビジネスクラス(の提供用)に落とし込むにはどうすればいいか悩んでいます」と笑顔を見せた。 今回グランプリに輝いた2人は、機内食を手掛ける魅力として、自分の料理を世界に発信できる点を共通して挙げていた。石井さんは「機内食は世界に発信されるので、僕の料理を世界の方に食べていただけます」と、特に今回のコンテストは自由に提案できたことから、自分の料理として利用者に提供できることにやりがいを感じているという。 作品を説明するプレゼンテーションでは「話し足りないです」と審査員たちを笑わせた中原さんも「世界中の人に自分の料理を食べて欲しいという思いで、機内食の世界に入りました」と、自らの作品が提供されることを喜んでいた。
Tadayuki YOSHIKAWA