岩手の「ホッケーの町」、パリ五輪に熱視線 女子代表に2人選出
岩手県岩手町出身の2選手が今夏のパリ・オリンピックホッケー女子日本代表に選ばれた。ホッケーは「町技」で、小学校の体育の授業にも取り入れられ、「『どの家にも傘立てにはスティックが立てられている』と言われる」(町教委)ほどなじみが深い。町の関係者は目前に迫った4年に1度の大舞台に、熱い視線を注いでいる。 14日夕刻、岩手町内のホッケー場であった「報告会」に集まった中学生ら約50人は、朗報に沸いた。この日あったパリ五輪女子日本代表さくらジャパンのメンバー発表で、町出身の及川栞選手と田中彩樹選手が内定。及川選手は東京五輪に続き2回目、田中選手は初めて選ばれた。 2人は小中学生のころ町内で競技に親しんだ。現在は及川選手がタカラベルモント、田中選手がグラクソ・スミスクラインに所属する。アシスタントコーチとして参加する小沢和幸さんも町出身者だ。 報告会では、岩手県ホッケー協会長でもある佐々木光司町長が「誰よりも努力し、切符をつかみとった」と3人をたたえた。田中選手の父忠博さん(61)と母さゆりさん(54)も出席し、「(彩樹さんは)小さな時から五輪を夢見ながら練習してきた。夢がかない、親としてもうれしい。自分の良いところをプレーで出してほしい」と語った。 町は1970年の岩手国体で同町がフィールドホッケーの会場となったことをきっかけにホッケーの振興に力を入れるようになった。国体に先駆け、知名度の低かった競技の普及を図るため町役場は自らチームを発足させた。年1回、町民ホッケー大会を開くことにし、国体開催時の町長だった宮田九八氏(故人)は町技に定めた。県内初の人工芝が整備され、県立沼宮内高は男子チームが全国屈指の強豪として知られる。 五輪のホッケー日本代表に選出された町出身選手は今回の2人を含めて計6人に上る。地元で競技に親しむ子どもたちにとっては、オリンピアンはスター選手だ。町内の中学生らが参加する「岩手U―15ホッケークラブ」女子主将の白籏樹璃さん(14)は「自分も先輩のように頑張りたい」と話す。 ただ、そんな町でも少子化に加え、若者のスポーツ離れもあり、競技人口は減少している。五輪のようにトップレベルの選手が競う世界大会で地元選手が活躍すれば、地元も「間違いなく活気づく」(町教委)という期待があり、関係者の応援にも力が入る。 20日には駅や役場に横断幕を設置したり、7月上旬に壮行会を開催したりするための実行委員会が設立された。地元の学校や自治会関係者らで構成し、協力金を募りながら、本番のパブリックビューイング(PV)を計画するなど、町を挙げて後押しする体制づくりを進める考えだ。【釣田祐喜】