バフェットは「経営者」かつ「投資家」だった 繊維会社のバークシャー・ハサウェイを買収、約60年で世界時価総額トップテンに
【バフェットの次を行く投資術】 ウォーレン・バフェットは、近年「投資の神様」として日本でも広く知られるようになってきた。バフェットが歴史上卓越した投資家であることは、ほとんどの人々にとって異論のないところだろう。 だが、バフェットが卓越した「経営者」であることは、まだ多くの人々に伝わっていないと感じる。繊維会社であったバークシャー・ハサウェイを1965年に買収し、その後約60年で世界時価総額トップテンに入る巨大企業に成長させた。 バフェット自身が述べるように、繊維会社としてのバークシャー買収は大失敗であった。しかし、新しいビジネスモデルで「事実上の創業者」として、相棒(副会長)のチャーリー・マンガーとともに成長を牽引(けんいん)した。 現在のバークシャーは「投資会社」と思われることが多いが、企業分類では「損害保険会社」とされるのが一般的である。担当アナリストも損害保険業界の専門家であるのが通例だ。その損害保険事業においては、インドでバフェットが発掘したアジット・ジェィンという損害保険に関わる数理の天才が、バフェットが買収した企業群をさらに大発展させた。 このように「人材活用」にたけ、経営者のマネジメントにも秀でていることが、投資にも大きく役立っている。逆に、企業を丸ごと買収するというM&Aの判断には、バフェットの投資に関する知識が大きく貢献しているということなのだ。筆者を含む一般投資家が、バフェットのやり方をそのまま拝借するのは困難だが、「コンセプト」に学ぶことはできる。 バフェット流で成功するためには、企業の「本質的価値」を正確に判定することが必要不可欠である。そして、その「本質的価値」の算定には、「あるべき企業経営の姿」を理解することが重要だ。 例えば、見かけ上の資産や人材がそろっていても、それらを活用して将来の成長につなげるマネジメントがきちんとできていなければ、投資先としては不適格なのである。 (人間経済科学研究所、国際投資アナリスト・大原浩) =敬称略