ヘッジファンドが転換社債裁定取引に復帰-発行増が後押し
発行が急増すれば「勝ち組と負け組がはっきり分かれることになり、ヘッジファンドにとって興味深い機会」につながる可能性があると、シングルトン氏はインタビューで述べた。「世界中の金利が企業の予想より高い水準にとどまっているため、借り換えプロセスは特に興味深いものになるだろう」と語った。
リーマンの影響
転換社債裁定戦略は、2008年のリーマン・ブラザーズ破綻の余波で崩壊し、大きな危機をもたらした。CFA協会が翌年発表した論文の中でAQRキャピタル・マネジメントのアソシエートはこの戦略を「大失敗」と呼び、その取引が08年に投資家に34%の損失をもたらしたと推計している。アービトラージャーが米国の転換社債の75%を所有していたと推定されるため、打撃は大きかった。
フィッシュ・アセット・マネジメントの転換社債ポートフォリオマネジャー、アレクサンドル・ファード氏によると、現在ではレバレッジを使わない伝統的な資産運用会社と、大規模なマルチストラテジーヘッジファンド内の転換社債裁定戦略の間で、保有比率のバランスが取れているという。アービトラージャーは現在、「2000年代よりもはるかに厳格な管理を行い、レバレッジを低くしている」と同氏は付け加えた。
転換社債裁定戦略は低金利時代さなかの19-21年にかけて復活を遂げ、これに特化したヘッジファンドは2桁のリターンを記録したが、インフレと利上げによって株式相場が急落し多くの転換社債がディストレスト(不良債権)化した22年にはピタリと止まった。
最近には、暗号資産(仮想通貨)交換所のコインベース・グローバルやフランスのビデオゲームメーカー、ユービーアイソフト・エンターテインメントなどが転換社債を発行した。中国の電子商取引大手アリババグループは先週、45億ドルの大型起債で初めて転換社債市場に参加した。
ブルーベイ・アセット・マネジメントの転換社債ポートフォリオマネジャー、ピエール・アンリ・ドゥ・モン・ドゥ・サバス氏は、「ヘッジファンドの転換社債市場での存在感は増しており、発行市場の需要にもそれを感じることができる。これは健全な傾向で、多くの流動性をもたらす」と語った。