不記載議員12人非公認 衆院選事実上スタート、石破首相の賭けの成否
12人非公認、情勢調査を踏まえ首相が決断
自民党の党紀委員会は今年4月、派閥の政治資金問題を受けて39人の処分を決定。不記載額が500万円未満の議員ら45人は処分せず、幹事長による注意としていた。「一度決めた処分を蒸し返すのは一事不再理の原則に反する」との旧安倍派議員らからの批判や、派閥事務局の指示に従っただけの不記載議員がいることもあり、石破首相や党執行部による協議は一時難航した。 だが、自民党独自で行った最新の衆院選情勢調査で、不記載議員が出馬を予定する選挙区などで苦戦が予想されることが判明。「政治とカネ」問題への国民の根深い不満が浮き彫りになり、危機感を強めた首相は最終的に厳しい対応を決断した。 具体的には、不記載議員のうち4月に党の重い処分を受けたか、現在も処分が続く議員に加え、選挙区の情勢分析も考慮して公認の是非を判断した。この結果、萩生田光一元政調会長、下村博文元文部科学相、西村康稔元経済産業相、高木毅元復興相ら12人は公認されないことになった。さらに不記載議員は小選挙区と比例代表との重複立候補を認めないことにした。 選挙基盤が弱い旧安倍派議員や地方組織からは「政治生命に関わるこんな重要なことを、解散間近に調整もなく決めるのはおかしい」「安倍派切りで支持率がアップするとは思えない」といった批判が相次いでいる。短期決戦を選択し、さらに世論の批判を踏まえて賭けに出た格好の首相だが、政治決戦を前に自民党内には動揺が広がっている。 国会論議が数日に限られたことで石破政権の基本的姿勢は不透明で、政策論議は深まっていない。野党が求めた衆参両院での予算委員会は開かれず、9日に党首討論のみを実施した。 野田氏は不記載のあった議員の多くを公認したことに関して「再調査しないでうやむやにして早く解散する。裏金隠し解散だ」と批判した。また、「当選したら追加公認するのか」と問いただしたのに対し、石破首相は「主権者である国民の判断があれば、追加公認することはある」と表明した。 自民党から議員個人に渡す政策活動費の扱いも取り上げられた。首相は今回の衆院選で使う可能性があると言及。質問した国民民主党の玉木雄一郎代表は「問題発言だ」と強調した。 ●「政治とカネ」・経済対策が争点 与野党ともに「政治とカネ」の問題を受けた政治改革、物価高への対応を含む経済対策などを公約の柱に掲げており、これらが主な争点となる見通しだ。