巡業でトークショーに臨んだ右から若隆景、正代、錦木

　大相撲の前頭若隆景（29＝荒汐）が2日、神奈川・相模原市で行われた秋巡業で、トークショーに参加し“らしさ全開”でファンを盛り上げた。会場に来たファンの質問に答える形式で、最初の質問は「生まれ変わって、力士以外の相撲協会の仕事をするとしたら何をしていますか？」。一緒に参加した錦木は「床山さん」、正代は「相撲協会の職員。理由は安定しているから」と話し、会場を盛り上げた。最後の3人目として若隆景が「生まれ変わっても力士になりたいです」と話すと、会場は「オーッ」と、大いに沸いた。本来は質問の前提を無視した形だが、相撲に真摯（しんし）な性格を表す言葉で、一気にファンの心をわしづかみにしていた。 【写真】若隆景を「推し」と公言している一山本 　前頭一山本が、若隆景のことを「推し」と公言し、若隆景グッズを集めていることは、相撲ファンの間では有名な話。この日、ファンから「一山本関のことをどう思っていますか？」と質問されると「どうも思っていないです」と、低音の渋い声で即答し、会場の笑いを誘った。最後に「カラオケの十八番は？　よかったら歌ってください」と“むちゃぶり”されると「のどの調子が悪いので」と、土俵上と同様に“いなし”もうまかった。トークショー後、報道陣の取材に応じた若隆景は「普段から歌わないですね」と、真顔で補足していた。 　9月の秋場所は12勝3敗の好成績を残した。優勝した大の里も破り、殊勲賞にも輝いた。その取組については「いい相撲を取れたかなとは思うけど、変わらない」と、あくまでも15日間の中の1日という意識だった様子。もともと若隆景は「大関候補」の呼び声が高く、幕内優勝も1度経験している。だが昨年春場所で右膝前十字靱帯（じんたい）断裂の大けがを負い、8カ月後に幕下まで番付を下げて復帰していた。 　実力者が東前頭7枚目だった秋場所を大勝ちするのは、当然の結果ともいえる。来場所は大けがした昨年春場所以来、1年8カ月ぶりに、上位総当たりとなる幕内上位まで番付を上げることが確実。「場所を追うごとに手応え、充実感は感じている」と、静かな口調で、かみしめるように話した。 　「来場所は上位。来場所からが大事」。かつての「大関候補」も12月には30歳。現在の3大関はいずれも年下だが、この日のトークショーで「好きな技、得意技」を問われると「上手、下手の出し投げ」と答えた。現役屈指の技巧派は、老け込むどころか、技に一段と磨きを掛けて、再び大関を目指していく。【高田文太】