日本初の「雹(ひょう)災緊急アラート」車両を守る!ひょうカバーも開発
予測困難な“降雹(ひょう)”に立ち向かう東芝70年の技術
群馬・みどり市は、赤城山の麓に位置する人口約4万8000人の町。こちらの家は、7月5日に降ったひょうによる被害で車庫の屋根にいくつも穴が空き、修理が必要になっていた。 屋根を打ち抜いたひょうは、発達した雷雲から降ってくる。昔から雷と空風が多い群馬県。この3年はひょう害が多く、住民たちは苦しめられてきた。
7月5日降ったひょうの大きさは5センチを超えており、大澤農園(みどり市)の大澤孝志さんは、「(ガラス温室では)片側だけで100枚ぐらい割れた。全体では約500枚」と被害状況を話す。修理費は約400万円かかったが、約8割を農業保険で賄うことができた。 ガラス温室を持っている農家60軒に被害が及び、全体では約5500万円の損害額(みどり市 集計)になったという。
ひょうは保険会社にとっても頭の痛い問題だ。9月19日、番組が三井住友海上で契約者向けサービスを開発する河北遼子さんを取材していた時、河北さんは「八王子で大きなひょうが降った」という連絡を受けた。 この時は、三井住友海上だけで約2000件の被害報告が寄せられ、約10億円の支払いが見込まれている。ひょう害への保険金の支払額が急速に増えているのだ。 「ひょう災の事故受付件数は、年間を通じて数百件くらいのレベルだったが、2022年度に入って、6月に降ったひょうの事故受付件数が1万件を超えた」と河北さん。 特に自動車保険への影響が大きく、ひょう災による事故の受付件数は、2020年に年間約350件だったものが、2023年には約1万7000件に急増。2023年度の自動車の保険金支払い実績は、約125億円に達していた。
そこで、東芝のエンジニア、和田将一さんが三井住友海上と組んで開発したのが、降ひょうの危険が高まったことを知らせる日本初の「ひょう災緊急アラート」。
この夏、群馬県で、「ひょう災緊急アラート」を使った実証実験が行われた。実験に参加したのは、「トヨタレンタリース群馬」(群馬・高崎市)。店で働く髙野真哉さんは、「当社でもひょう害車両が1100台を超えている」と被害状況を話す。 以前はなす術がなかったが、この店では、和田さんが開発したアラートを受信し、車にひょうが降る前に屋根の下に避難させるなどの対策を行っている。