大阪メトロ中央線「20系」は何が特別だったのか 技術面で大きな足跡、引退直前「最後の月検査」に密着
こうして、20系は6両編成16本という陣容になったが、1990年以降の増備は新20系へと移行した。新20系は製造コストを下げられるステンレス製車体とし、車体デザインも大幅に変更。技術の進歩に伴い、制御装置もより新しい世代のものとなったが、基本仕様は20系と同じである。 「ただ、新20系は車体の材質の関係で、20系より車重が少し重くなりました。そのため、特に高速域での加速は20系の方が若干よかったようです」(大谷内さん)
そういえば、アルミ車体の20系や10系は走行中に客扉が風圧でバタバタと音を立てている印象が強い。新20系では、扉のバタつきを抑えるために振れ止めが設置されたそうだが、こうした重さも関係あったのかもしれない。 ■新20系は御堂筋線などへ投入 新20系は20系が活躍していた中央線と谷町線に加え、御堂筋線・四つ橋線・千日前線にも進出。第三軌条方式の5路線すべてに配置され、その数は572両(大阪港トランスポートシステムが製造し、後に大阪市交通局が譲受した12両を含む)に及んだ。新20系は便宜上、所属線区によって21系・22系……などと形式が分けられているが、基本仕様は同一であり、グループ全体でみると全国の地下鉄車両で最大勢力を誇る。
2004年、20系に転機が訪れる。中央線と相互直通運転を行う近鉄けいはんな線(当時は東大阪線)では、2006年に生駒―学研奈良登美ヶ丘間を延伸開業するのに合わせて、最高速度の時速70kmから時速95kmへの向上が計画された。これには車両側の対応工事が必要となるが、ちょうど20系が制御機器の更新時期を迎えていたことから、谷町線に所属していた20系全9本を、中央線の新20系9本と交換。20系に速度向上の対応工事を行うこととしたのだ。
「もともと20系は最高時速70kmを念頭に設計されていますので、制御装置だけでなくモーターなども時速95km対応のものに交換する必要がありました。制御装置は、これまでGTO素子のものを床下の両側に搭載していましたが、当時最新だったIGBT素子を使った小型のものに交換したことで、床下の片側にまとめることができました。もう片側は、重量バランスの関係で機器箱が残っているものの、その中はほとんど空っぽです」(谷口さん)