手術を乗り越えて復活! マシンをGRヤリスにスイッチして全日本ラリーに再参戦した「コバライネン」を直撃した
後半戦のコバライネン選手の活躍に期待
――手術後は、どのように過ごしていましたか? コバライネン選手:手術後は9日間、入院していた。回復が始まっていることが確認できたので、その後は自宅に戻って療養。とくに制限はなかったけれど、最初の8週間は軽い運動だけにして、毎日少しずつ歩いていた。 その後は病院の検査で順調に回復していることがわかったので、ジョギングやジムに通っていた。少しずつ通常の生活に戻りつつあるなか、2週間前に3カ月検診を受けたところ、心臓や胸骨、肺もすべて回復したということもあって、ラリーに復帰すると決めた。 ――モータースポーツはかなりハードなスポーツだと思いますが、体力的に問題はないんでしょうか? コバライネン選手:手術のあと、しばらくトレーニングができなかったから、体力は少し落ちているかな。でも、病気は完全に回復したし、それがもっとも大切なことだからね。テストをした限り、ラリーカーをドライビングするには十分な体力はあるけれど、手術前の体力に戻したい。でも、それにはもっと時間が必要になるかな。 ――それまで2年間ドライブしていたシュコダ・ファビアR5から2024年はトヨタGRヤリス・ラリー2にマシンをスイッチしましたが、どのような印象ですか? コバライネン選手:2日間のテストを終えた段階だけど、GRヤリスは素晴らしいクルマだね。古いクルマだったファビアに対して、GRヤリスは新しいクルマで、シャシー、エンジン、サスペンションとすべてがよくなっている。グリップも高いし、パワーもあるから、本当に乗っていて楽しいよ。 ――ファビアR5とGRヤリス・ラリー2でもっとも違う部分はどこですか? コバライネン選手:エンジンだね。出力特性が違う。GRヤリスの3気筒エンジンは低回転域でのトルクが強いけれど、ファビアは中高速回転域でのトルクが強いから、エンジンのマネジメントの仕方が変わってくる。 ――シャシーについては? コバライネン選手:サスペンションやボディ形状の違いもあるのか、GRヤリスはフロントグリップが鋭くて、非常に簡単に曲げられるようになっている。ファビアは少し怠惰な部分もあったから、そのあたりが大きく違うかな。 ――今回の第6戦ラリー・カムイに加えて第7戦ラリー北海道、第8戦ラリーハイランドマスターズに参戦する予定ですが、今年の目標は? コバライネン選手:まず、今週末のラリー・カムイはラリーに復帰して、ラリーウィークを通じて快適に走り切ること。というのも、休止期間が長かったので、自分のパフォーマンスがどうなっているのかがわからないからね。とくにグラベルラリーは難しいから、昨年のようにルーティンに戻ることを目標にしたい。その後は体調に問題なければ、ラリー北海道とラリーハイランドマスターズでパフォーマンスを向上させたい。GRヤリスはいいフィーリングなのでプッシュしたいけれど、今週末はまずラリーを楽しみたいね。 ――ラリー・ジャパンは参戦しますか? コバライネン選手:その予定だけど、WRCはハードだから、100%回復していたらチャレンジしたいね。 こうして今季初のグラベル戦となった第6戦のラリー・カムイで全日本ラリー選手権に復帰したコバライネン選手は、SS5で5番手タイムをマークするなど安定した走りを披露し、レグ1を6番手でフィニッシュ。さらにレグ2ではSS7で4番手タイムをマークすると、SS10で2番手タイムをマークするなどペースアップを果たしていた。 SS11でも4番手タイムをマークし、クラス6番手につけていたコバライネン選手だったが、残念ながら最終SSでマシントラブルが発生し、クラス11位に後退。復帰戦で入賞を果たすことはできなかったが、スバルWRXでコバライネン選手と6番手争いを繰り広げていた鎌田卓麻選手は「自分たちも進化はしているんですけど、まわりが速くなっていますからね。今年はウエット路面なんですけど、コバライネンはドライだった昨年の優勝タイムより速くなっているので、それだけレベルが高くなっていると思います」と語っているだけに、確実にコバライネン×GRヤリスは進化を遂げているようだ。 「ラリー北海道のグラベルロードは素晴らしいから本当に楽しみ」と語るコバライネンが、9月6~8日にかけて北海道帯広市を舞台に開催される全日本ラリー選手権・第7戦「ラリー北海道」でどのような走りを見せるのか? サムライスピリットをもつ元F1ドライバーの動向に注目したい。
廣本 泉