「生理用品、壇上に並べられては…」女性への配慮に欠けた能登の避難所、防災士が支援通し得た気付き
体育館の壇上、紙おむつの横に並ぶ生理用品
「生理用品はあっても、これでは取りに来づらいのでは…」。1月下旬、石川県能登町の学校の体育館に開設された避難所。長野県下伊那郡阿南町から支援に入った県防災士会南信地区ブロック長の上野真由さん(38)は、はっとした。生理用品が紙おむつなどと一緒に壇上に並べられていたからだ。 【写真】能登町の避難所となった体育館の壇上に紙おむつなどと一緒に並べられた生理用品。女性職員に声をかけて受け取れるよう改善した=1月21日(上野さん提供)
「必要なのに言い出せない人がいてはいけない」
上野さんは当初、高齢の避難者が多かったことから「使う人がいないのかもしれない」と思った。だが、避難生活のさまざまな場面で「ぜいたくは言えない」と口にする被災者と接するうち、「必要なのに言い出せない人がいてはいけない」と思い至った。 長野県内から派遣されていた周囲の支援者に改善を提案。生理用品を取りに来づらい人は女性スタッフに声をかけてもらうよう張り紙で促すことにした。上野さんは「たとえ生死に関わることではなくても、もっと早く改善していれば救われた女性がいたかもしれない」と振り返る。
内閣府が2022年度に全国1741の自治体を対象に実施した調査によると、生理用ナプキンを避難所に備蓄している自治体は82・5%に上った一方、乳幼児用の紙おむつは66・9%、お尻拭きは26・1%、離乳食は14・3%にとどまった。長野県内19市では生理用ナプキンを2市、紙おむつは3市、お尻拭きは11市、離乳食は16市が備蓄しておらず、1市が「乳幼児用品を備蓄していない」と回答した。
少ない女性の支援者
被災者支援に女性のニーズが反映されにくい一因として、国は、支援者側に女性が少ないことを挙げる。災害対応の部署に女性職員が1人も配置されていない自治体は全体の6割を占め、都道府県別の自治体数で見ると、長野県は83・1%(77市町村のうち64市町村)でワースト1位だ。 県内には能登半島地震被災地への女性職員の派遣を見送った自治体もある。背景には、発災直後はトイレや更衣室が限られる実情があるほか、女性職員への「配慮」もあるという。1月28日以降、避難所運営や罹災(りさい)証明発行業務などの支援のため、石川県の輪島市や羽咋市に職員6人を派遣した下伊那郡阿南町は女性職員を人選から外した。町危機管理防災係は「派遣を決めた当初は業務の過酷さや寝泊まりの環境が分からず、男女同室で寝る可能性もあったため」と説明する。