「世界で8億人が糖尿病」30年間で倍増 健康格差も拡大
医学誌『The Lancet』に最近掲載された研究によると、世界で8億人以上が糖尿病を患っており、この数は過去30年間で倍増している。 糖尿病患者は1990年以降、6億3000万人増え、世界人口の14%が糖尿病を患っていることになる。患者の半数以上が4カ国に集中しており、インドが最も多く、中国、米国、パキスタンと続く。 患者の増加はマレーシアやパキスタン、エジプトなどの低中所得国で目立って多かった。 このような健康格差は、世界中の多くの糖尿病患者が治療を受けていないことで広がっている。2022年には糖尿病患者の半数以上、30歳以上の成人4億4500万人が糖尿病の治療を受けていない。この数は1990年の3.5倍となる。多くの低中所得国、特にアフリカ大陸のサハラ以南と南アジアの国々の受診率が最も低かった。 この研究は、世界中の多くの人の生活の質を低下させる慢性的な衰弱性疾患である糖尿病の有病率と治療における不平等が拡大していることを浮き彫りにしている。糖尿病は血糖値が高すぎる場合に発症する。自己免疫などで血糖値を下げるホルモンであるインスリンが十分に分泌されないもの(1型糖尿病)と、インスリンの働きの低下によるもの(2型糖尿病)がある。糖尿病患者の大部分(90~95%)は2型糖尿病であり、健康的な食事と定期的な運動でほぼ予防できる。肥満や超加工食品の摂取、運動不足の増加により2型糖尿病の患者が増え続けている。 糖尿病は健康に大きなダメージを与える。高血糖は血管を傷つけ、最終的には心臓病や腎不全、視力低下につながる。実際、糖尿病は米国で8番目に多い死因であり、腎不全や下腿切断、成人の失明の主原因だ。 糖尿病の有病率と治療における世界的な格差を縮小するためには、医療政策と治療の受けやすさの改善など、大きな制度改革を行わなければならない。格差があることで、低中所得の国々では糖尿病を患いながら治療を受けていない人が増えている。 研究は肥満人口の抑制に取り組むことの重要性を強調している。世界肥満連合(WOF)によると、肥満人口は2030年までに10億人に達すると予測されている。糖尿病を早期に発見し、糖尿病の有害な合併症を予防するための教育とともに早期介入を行えるよう、診察でできるだけ多くの患者をスクリーニングする積極的なアプローチを世界的に採用すべきだろう。 加えて、特に十分なサービスが提供されていない貧しい地域社会で、多くの人が安価で入手しやすい健康的な食品を摂れるようにすることは、人々の健康を維持し、肥満、ひいては2型糖尿病の患者を減らすのに役立つ。富裕層だけでなく、あらゆる人が利用できる公園やフィットネスセンターへの投資は世界中で糖尿病を抑制するのに不可欠だ。 低中所得国で治療が十分でないことも、糖尿病患者の増加を抑制する上で大きな妨げとなっている。すべての人が早い段階から受診できるインフラ、そして手ごろな値段で加入できる、あるいは政府から補助金が出る保険制度を低中所得国では検討する必要がある。世界の医療環境を向上させるには、これらの障壁に対処する必要がある。 糖尿病の大半のケースは完全に予防することができる。我々は世界各地の糖尿病患者を苦しめている極めて大きな不平等に目を向けなければならない。この問題に着手しなければ、多くの人が苦しみ続けることになる。
Omer Awan