ワインの澱活用しパン開発 川島屋(千葉市花見川区)×SawaWines(八街市) 千葉県内で限定販売中「地元産品のPRに」
千葉県内でパン店を展開する川島屋(千葉市花見川区)は、八街市のワイナリー「Sawa Wines(サワワインズ)」と連携し、ワイン醸造時に出る澱(おり)を活用したパン「ワインブレッド」を開発した。通常は廃棄される澱を使うことで、ワイン特有の香りや味が楽しめる特徴的なパンに。川島屋の川島隆弘社長は「新たな付加価値を付けてアップサイクルするだけでなく、千葉の食のPRにもつながる」と期待している。川島屋が運営する「マロンド」の県内7店舗で数量限定で販売中だ。 ワインの澱は、タンパク質やポリフェノールなどの成分が結晶化した沈殿物のこと。通常、製造過程で澱を取り除く。サワワインズの山本博幸代表によると、同ワイナリーでは1シーズンの醸造で数キロ~数十キロ単位で澱が出るが、これまで活用されることはなかった。 川島屋がワインの澱に注目したのは2022年。ワイナリーが澱を廃棄していることを知り、以前ビールの澱でパンを試作した経験もあったことから開発に取り組み始めた。川島社長によると、欧州では水の代わりにワインを使ったパンが浸透しているが、実際に販売するとなると、ワインの分価格が高くなる。廃棄している澱を使うことで、価格を抑えながらもワインを使ったパンを味わってもらえると考えた。 中でもサワワインズは、ブドウ栽培も八街市内で行っている県内でも珍しいワイナリー。川島社長は「川島屋は創業して100年以上。千葉への恩返しも兼ねて地産品を応援できればと考えており、ぴったりだと思った」と振り返る。 開発で最も注意を払ったのは澱の量。澱に含まれる酵素はパンの発酵を阻害するためだ。入れすぎるとえぐみにもなる。ワインの風味を感じつつ、幅広い層に味わってもらえるよう絶妙なバランスで仕上げた。今年はサワワインズから約20キロ(ワイン約2千リットル分)の澱の提供を受け、計約500個限定で製造している。 1個302円(税込み)。来年以降も醸造シーズン後に期間限定で販売していきたい考えで、川島社長は「おいしいパンを通じ、千葉にワイナリーがあることを知ってもらいたい。食で千葉を盛り上げられれば」と見据える。山本代表も「秋と言えばワインブレッド、八街と言えばワインと言われるよう、どちらも千葉の新たな名産として浸透するきっかけになればうれしい」と期待した。