スパーリングする那須川（撮影・鈴木みどり）

　無敗の格闘家でプロボクシングWBA世界バンタム級3位の那須川天心（26＝帝拳）が“天心流マジック”で世界挑戦切符をつかむ。ジョルウィン・アシロ（23＝フィリピン）とのWBOアジアパシフィック同級王座決定戦（14日、東京・有明コロシアム）を控えた2日、都内でスパーリングを公開。自身が「マジック」と表現する独特の動きで世界上位ランカーを翻弄（ほんろう）して、急成長を印象づけた。 　　　◇　　◇　　◇ 　まるで水の流れのように那須川は攻め続けた。圧巻は最終3ラウンド。WBO世界同級3位のメディナを、巧みなステップでロープに追い込み、上下に連打をたたき込んだ。「長い距離も短い距離も支配する。パンチは正確。スピードもパンチ力もものすごくついた」。前戦も練習相手を務めたメキシコの強豪も、その急成長ぶりに驚いた。 　本人がその要因をこう説明した。 　那須川　今まで意識しながらやっていた動きが無意識にできるようになった。これまでワンツーや単発のフックだけだったが、アッパーやボディー、左から右につなげる体の使い方が自然にできるようになり、パンチの種類も増えた。今は自分で相手を動かし、導き、当てることができる。 　原動力が自ら「マジック」と表現した独特の動き。 　那須川　右左の手だけではなく、僕は足もパンチだと思っている。他人にはないステップや踏み込みがある。（その）見えないパンチをたくさん打って距離を制圧する。（相手は）どうやればいいか分からなくなって手が出なくなる。それが僕のマジック。ボクシングじゃないボクシング。 　その異次元のステージにプロデビューわずか1年半で到達した。アシロ戦も両拳に加えて足の動きも駆使して、試合を支配して勝利をつかむつもりだ。 　国内の内規では日本またはアジアのベルトを取れば、世界挑戦の資格が得られる。すでに9月3日に初防衛に成功したWBO世界バンタム級王者の武居由樹（大橋）が、リング上で将来の対戦候補として那須川の名前を口にした。 　那須川　そんな時期が近づいてきていると思う半面（自分は）まだ5戦目。新人なので、もうちょっと待っていてください。 　“天心流”をさらに完成に近づけて、満を持して世界の舞台に殴り込む決意だ。【首藤正徳】 　〇…「昇龍拳」をイメージ！？　那須川が初タイトル挑戦グッズのロゴに龍のデザインを刻んだ。同日の公開練習で龍のロゴ入りTシャツで登場した那須川は「昇り龍の上昇にしました。最近、僕は『和』が好き。（背中部分の）天のロゴ（の周り）には雲をつけた」と笑顔。対戦格闘ゲーム、ストリートファイターの打撃技「昇龍拳」をほうふつさせる強烈な一撃でKOを狙う構えだ。また入場コスチュームは「カルチャー的に面白い」と昭和ボクサーをイメージしたロングガウンにしたと明かした。