研究史上最古、37億年前の地磁気の証拠を発見 強度は現在並
地球は固有の強い磁場を持つ天体の1つです。陸上に棲む多くの生物にとって欠かせない存在であるこの「地磁気」は、地球誕生から徐々に強くなっていったと理解されています。ただし、その正確な時期はよくわかっていません。 今日の宇宙画像 マサチューセッツ工科大学のClaire I. O. Nichols氏などの研究チームは、グリーンランドから産出した極めて古い岩石を調査し、約37億年前の地球に地磁気が存在した証拠を見つけました。これは最も古い時代の地磁気の証拠です。また、その強度は現在と比べてもそれほど弱くない値であることから、地磁気の形成や、古代の生命がどのように進化し、数を増やしたのかを探る上でも重要な発見となります。
■「地磁気」は生命と大気の両方に重要
方位磁石が北を向くことからもわかるように、地球には固有の磁場である「地磁気」が存在します。地球の磁場は他の天体と比べるとかなり強度が高く、岩石などの固体物質を主体とした天体としては最も強度が高いという特徴があります。 地磁気の存在は、地球が生命を宿す天体となった理由の1つであると考えられています。地磁気にはいくつかの恩恵がありますが、重要なものの1つとして、宇宙から降り注ぐ太陽風などの高エネルギーな荷電粒子(電気を帯びた粒子)をガードするというものがあります。これは地上の生命にとって重要な恩恵です。このような荷電粒子は生物にとって有害であり、細胞やDNAなどを傷つけてしまいます。もしも地磁気が無ければ生物は海の中から外に出ることはできなかったでしょう。 もう1つ挙げられる重要な恩恵として、大気の流失を防ぐという役割があります。先述の通り、地磁気がなければ太陽風などの荷電粒子が直接大気に衝突します。高エネルギーな粒子が衝突すると、大気を構成する分子に重力を振り切るほどの運動エネルギーが与えられることもあります。つまり、地磁気が弱いとその分だけ分子が逃げ出しやすくなり、大気は薄くなってしまうのです。実際に、地球とよく似た性質を持つ火星にはとても薄い大気しかありませんが、その理由の1つは固有の磁場の弱さであり、大気の流出を防ぐことが出来なかったためだと考えられています(※1)。 ※1…他にも、重力が地球の半分以下であるという、大気分子を引き止める力の弱さも挙げられます。