講談社、ワニブックスを子会社化の狙いは? 業界再編へのはじめの一歩に? 漫画家も反応
■講談社がワニブックスを子会社化 出版業界最大手の講談社が、5月24日、ワニブックスを完全子会社化したと発表した。ワニブックスは俳優・タレントの書籍や写真集を数多く手がける出版社。これまでに刊行した書籍で著名なものとして、約225万部の大ベストセラーとなった麒麟 田村裕『ホームレス中学生』、八木勇征1st写真集『CONTACT』、乃木坂46 田村真佑1st写真集『恋に落ちた瞬間』などがある。 【写真】赤楚衛二、ワニブックスから刊行され好調だったフォトブック『E』の中面や、写真展の様子を見る また、料理レシピ本大賞 in Japan 2023[お菓子部門]を受賞した『とんでもないお菓子作り』などの実用書でも実績をもち、『世界のニュースを日本人は何も知らない』、『大谷翔平を追いかけて-番記者10年魂のノート-』などの新書や単行本の分野でもヒット作を生み出し、近年は書籍を柱としたリアルイベントも精力的に行っている。 講談社は、「今回の決定により、市場の活性化に大いに寄与するとともに、出版流通の諸課題への対応にも協同して取り組んでまいります」と述べた。 ■多くの人気漫画家も反応 多くの漫画家が今回の話題に反応。なかでも、「週刊少年マガジン」で『カノジョも彼女』を連載していた漫画家のヒロユキは、「ワニブックスから出てたこれも実質講談社の本になってしまったw」と、ポスト。“これ”とは、ワニブックスから刊行されたエッセイ『アニメ化4作品のマンガ家が腕時計にハマった結果5000万円の借金をつくった話』である。 また、ネット上ではワニブックスと聞き、「月刊コミックガム」を連想した人も多かったようだ。「月刊コミックガム」は1996年に隔月刊で創刊され、1999年から月刊化。『一騎当千』、『月詠 -MOON PHASE-』など数々のヒット作を生み出したが、2015年を機に、紙媒体での刊行は一時休刊となった。 ■業界再編の動きが加速? ある大手出版社の編集者は、今回の講談社の発表に「率直に驚いた」と語り、「今度、大手が中小出版社を吸収合併したり、子会社化する勢いは加速するのではないか」と推測する。 「現在、特に実用書などを出版する中小の出版社は、ネットの影響で出版点数が落ち、経営体力がないところも多いと思います。しかし、そういった出版社が長年培ってきた編集力やノウハウ、何より編集者のスキルは唯一無二だったりします。そこで、漫画や不動産などで経営の柱をもつ出版社が、特定の分野に強みのある出版社を吸収していく流れが生まれそうです」 書店業界でも業界再編の動きがみられるが、出版業界でも今後、進んでいくのか。今回は出版社による出版社の子会社化だが、IT系の企業も出版社に関心を示しているという話を聞くこともある。今後の動向を引き続き注視していきたい。
文=元城健