佐々木麟太郎が米デビュー弾 MLB公式サイト「彼を取り囲んでいる誇大広告に即座に応えた」
◆MLBドラフトリーグ トレントン・サンダー11ー1 フレデリック・キーズ (11日・米メリーランド州ナイメオ・フィールド) 花巻東(岩手)から米国の名門・スタンフォード大に進学する佐々木麟太郎内野手(19)が11日(日本時間12日)、米デビュー戦で初本塁打を放った。MLBドラフトリーグのトレントン・サンダーの一員としてフレデリック・キーズ戦に「4番・一塁」で先発出場し、決勝2ランを含む2安打3打点。4勝目を挙げたブルージェイズ・菊池雄星投手(32)、16号を放ったドジャース・大谷翔平投手(29)と“花巻東デー”の流れをつくり出した。 人もまばらな球場が騒然とした。1―1の3回2死二塁。背番号50のユニホームを身にまとった佐々木が2ストライクから20歳右腕・リチャーズ(サウスウエスタン・イリノイ大)の90・7マイル(約146キロ)直球を振り抜いた。打球角度41度。天性のアーチストの放物線が右翼フェンスを越える。打球速度99・7マイル(約160・5キロ)、飛距離352フィート(約107・3メートル)。米デビュー戦の2打席目で生まれた初安打が決勝2ランだ。ベンチでは仲間からサイレントトリートメントの祝福を受けた。 6回2死一、二塁でも打球速度105・7マイル(約170・1キロ)の“弾丸”右前適時打を放ち、マルチ安打をマーク。MLB公式サイトは「日本のプロスペクト(若手有望株)」と題した記事で麟太郎の衝撃弾を紹介し、「すでに彼を取り囲んでいる誇大広告に即座に応えた」と称賛。サンダーのスミス監督は「魔法のようだった」と賛辞を贈った。 米国では新年度が9月から始まるため、正式には入学前。スタンフォード大の試合に出場できず、渡米後はまだ公の場でコメントを発していないが、この日は高校の先輩の菊池(ブルージェイズ)が4勝目、大谷(ドジャース)が16号と“花巻東デー”となった。麟太郎は自身のインスタグラムで3人が活躍したことを伝えるスポーツ報知などの記事を引用し、「#花巻東」の文字と笑顔の絵文字を3つ並べた。 先には誰もいない道を進む。高校史上最多の140本塁打を記録しながら、NPBでも日本の大学でもなく、留学を選択した。「怖さがないわけではないですけど、それよりワクワクする部分があって」。二刀流で常識を変えた大谷のような“唯一無二”の存在が目標。「少しは追いつけるように頑張ります」と憧れの先輩とも日々連絡を取り合い、刺激に変えている。 21年に創設された「MLBドラフトリーグ」は今季は6チームが参加し、6月から9月にかけて80試合を戦う。前期は7月のドラフト前の高校生や大学生などアマチュア選手が出場。当然、30球団のスカウトも足を運び“メジャーへの登竜門”といっても過言ではない。麟太郎がドラフト候補になるのは26年だが、印象に残ったはずだ。堂々とした第一歩から「RINTARO SASAKI」の挑戦が幕を開けた。 ◆MLBドラフトリーグ 21年に発足した6チームによる野球リーグ。シーズンの前半はプロ入り前のアマチュア選手が、後半は大学卒業やドラフト指名を受けるなどアマチュアでのプレー資格を失った選手がそれぞれ出場できる。今季は前半が今月4日(現地時間)から7月13日までで1チームあたり35試合、後半が7月18日から9月4日まで同45試合。全試合がウェブサイトで配信される。MLB球団のスカウトの視察も受けやすく、選手はデータ測定がなされ、全30球団に共有されるため評価につながりやすいメリットがある。創設からの3年間で133人のドラフト指名、70人のドラフト外契約選手を輩出している。 ◆「有言実行」英語バッチリ 5月14日(同15日)のことだった。オラクルパークのジャイアンツVSドジャース戦に麟太郎が現れた。同じ米カリフォルニア州にあるスタンフォード大野球部の休日を使い、試合前にはベッツらの打撃練習を見学していたが、もちろん通訳はいない。それでも、新しい仲間と爆笑していたのだから、もう英語はバッチリということだろう。 昨年10月の国体後に米留学を発表してから、基本的には週3~4回、オンライン英会話で2~3時間勉強を重ねてきた。中学時代は生徒会長を務めるなど勉学にも熱心な男。昨秋の渡米時に英語力不足を痛感し、「まずは最低限、米国の人と討論できるレベルに」と話していたが、まさに有言実行だ。「失敗をどんどん積んで、それを成功に変えていけたらいい」という。努力を重ねるのは野球だけではない。日頃の姿勢にこそ、麟太郎の“人間力”が詰まっている。(中村 晃大)
報知新聞社