Apple が4四半期連続の減収…イノベーションのジレンマに陥り業績低調なAppleが抱える最大の課題とは
Apple社(以下、アップル)の時価総額が12月6日に再び3兆ドルを超えた。アップルは6月30日にマイクロソフトやサウジアラビアの国営石油会社であるサウジアラムコ、グーグルの親会社であるアルファベットなどの名だたる企業を抑えて、いち早くこの大台を突破していた。まさに世界中の企業のトップランナーだ。しかし、その牙城は盤石なのだろうか。 【図を見る】一目でわかるMacとiPadの売上推移
プロダクト事業の売上高が5%減少
アップルが12月に入って株価が押し上げられたのは、アメリカの利上げ停止観測が強まった影響が大きい。足元の業績が弱含んでいるのだ。革新的な製品を生み出す力を失い、手堅いサブスクリプションサービスで稼ぐようになっている。 アップルは4四半期連続の減収だった。特に弱いのがiPhoneやMacなどのプロダクト事業だ。2023年7-9月のこの事業は5.3%の減収。2023年度通期の売上高は、前年度比5.5%減少している。 アップルの2023年度の売上高は、3832億ドルで前年度比2.8%の減収だった。主力であるプロダクト事業の不調の穴を埋めているのがサービス事業。アップルミュージックやアップルアーケードなどのサブスクリプション型のサービスを提供している。 2023年7-9月のサービス事業の売上高は223億ドルで、前年同期間比16.3%の増加。通期でおよそ1割伸びている。 アップルは今年10月にサブスクリプションサービスの値上げを行った。アップルTV+は6.99ドルから9.99ドル、アップルアーケードを4.99ドルから6.99ドル、アップルニュース+は9.99ドルから12.99ドルに改めている。 これは3~4割アップの大胆な価格改定だ。しかし、アップルは2023年10-12月の売上高を前年並みと予想している。値上げによるサービス事業の伸長に期待できるが、プロダクト事業の伸び悩みでその効果が相殺されている様子がわかる。
破壊的イノベーションの象徴的な存在だったが…
プロダクト事業が弱含んでいる主要因は、MacとiPadの不調だ。品質が向上したことでパソコンなどのハードは製品ライフサイクルが長くなっているうえ、インフレが進行して高額製品はユーザーの間で買い控えが広がっている。 しかし、アップルの売上高の半分はiPhoneが占めている。このカテゴリの売上高を伸ばせないことが、アップル最大の課題であるのは間違いない。 企業におけるイノベーション研究における第一人者、クレイトン・クリステンセンの世界的名著『イノベーションのジレンマ』で、クリステンセンはイノベーションを「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の2つに分けた。大企業は破壊的イノベーションを軽視すると説明する。 iPhoneは破壊的イノベーションの象徴的な製品だ。ノキアとブラックベリーの高性能携帯電話やソニーのウォークマン、キヤノンやニコンの低価格なデジタルカメラを市場から一掃し、それらの機能をポケットに収まる端末1つに集約した。 クリステンセンは、破壊的イノベーションを起こした後、企業は既存顧客に主眼を置き、製品価値を高めることに注力すると説明する。 コダックはデジタルカメラを世界で初めて開発したにも関わらず、フィルムカメラの主力事業から転換することができずに淘汰されたのはよく知られている。アップルもその轍を踏んでいるように見える。 その象徴的な出来事が有機ELの採用だ。アップルは広範なサプライチェーンを構築し、同一の部品を複数社から調達するマルチベンダー方式をとってきた。これは供給体制を安定させることと、アップルの価格交渉力を強くするという2つの意味がある。 アップルはiPhoneという強力なブランドを構築して消費者を魅了し、世界同時販売で市場に大量供給、価格交渉力を駆使して低価格で製品を作り出すというビジネスを展開していた。まさに持続的イノベーションの理想形ともいえるビジネスモデルである。 しかし、このモデルは密かに転換点を向かえることになった。それがサムスンただ1社から提供されることになった有機ELだ。
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