【1万人に1人】弱視のキックスケーター中学生、将来の夢は「世界で活躍するプロになりたい」
障がい者として生きていくのではなく、“プロスケーター”として生きていく。弱視の少年・鳴海瑛太くんが“将来の夢”に掲げたのは、国内にはまだ1人しか存在しない「フリースタイルスクーター」のプロ選手。中学3年生、進路と向き合う瑛太くんの決意と葛藤を追った。 【動画】瑛太くんが練習に打ち込む様子
約1万人に1人発症する遺伝性異常による疾患
問題用紙に顔をぐっと近づけ、父と一緒に問題を解く鳴海瑛太くん。岐阜市に住む中学3年生、現在15歳だ。約1万人に1人発症するといわれる、遺伝子異常による疾患「家族性滲出性硝子体網膜症」による視覚障害がある瑛太くん。 あまり症状のない人からほとんど見えない人まで、視覚障害の度合いは人によって異なるが、一度発症してしまうと治すことはできない病気だ。また、網膜の異常のため、視力はメガネやコンタクトレンズで矯正することはできない。 瑛太くんの視力は0.02。小学4年生までは盲学校で過ごし、現在は中学校の特別支援学級に通学。勉強する時は、教科書を拡大コピーして、顔に近づけて文字を読んでいる。初めて歩く場所では、段差の有無がわからず転んでしまうことも。
視覚障害体験ゴーグルを装着し、弱視の体験をした。全体がぼやけており、前にある物の輪郭や距離感が把握できない視界。瑛太くんの場合は視野も狭いため、この写真よりも見えていないそうだ。
瑛太くん専用の練習場を父が手作り!
そんな瑛太くんが夢中になっているスポーツが、小学6年生から始めた「フリースタイルスクーター」。ヨーロッパやオーストラリアで始まったスポーツで、競技用キックスケーターで滑りながら、ジャンプや回転などアクロバティックな技で観客を魅了する競技だ。
「かっこいい、やりたい」と、自らフリースタイルスクーターに挑戦した瑛太くん。しかし、練習を始めた頃は、視覚障害が大きなハンデとなった。 瑛太くんを苦しめたのは、練習場の足下の“色”。フリースタイルスクーターでは、「セクション」と呼ばれる勾配の高低差を使用する。この「セクション」の色が黒だと、瑛太くんの視力では高低差などを認識することが難しく、白のセクションでは反射して見にくくなってしまう状態だったのだ。 持ち前の運動神経の良さですぐに滑れるようになった瑛太くんだったが、ジャンプなど技の練習となると、色の影響でうまく練習が進まない日々が続いた。何度も転倒し、時には泣いてしまうことも。