人それぞれ意見があり、世代間ではギャップも生じる
「フィルジル・ファン・ダイクってヤツは、つくづく幸運なディフェンダーだと思うよ。なにしろウェイン・ルーニー、ディディエ・ドログバ、ロビン・ファン・ペルシー、アラン・シアラー、ティエリ・アンリ、カルロス・テベス、フランク・ランパードといった凄腕のアタッカーがいない時代を生きているんだからね」
ドイツ代表とチェルシー、レバークーゼンで一世を風靡したミヒャエル・バラックの発言である。当代随一のセンターバックを、バッサリと切って捨てた。
評価は人それぞれだ。正解・不正解は判断するのは難しい。みずからの意見を頑なに信じ、反対する者を「絶対に間違っている」と糾弾する狭量は分断を招く。
いま、世界は極めて危険な方向に向かっているような気がしてならない。
さて、バラックが指摘したように、ルーニーをはじめとする8人のアタッカーはたしかに凄腕だった。だれもが複数年にわたってハイパフォーマンスを維持している。
また、アンディ・コールとドワイト・ヨークの “ホットセット” も一筋縄ではいかず、ナイアル・クインとダンカン・ファーガソンはヘディングだけで飯を食っていた。1990年代後半から10~15年ほどのプレミアリーグに個性的なアタッカーが揃っていたことは、バラックの言葉を借りるまでもない。
では、ファン・ダイクが対峙してきた凄腕アタッカーをチェックしてみよう。ハリー・ケイン、アーリング・ハーランド、ソン・フンミン、ジェイミー・ヴァーディー、ピエール=エメリク・オーバメヤン、そしてセルヒオ・アグエロといったところだ。
たしかに、実績ではバラックの時代が上まわっている。プレミアリーグの歴史を築いた英雄ばかりで、同じ時代を生きた選手に対するリスペクトとみずからのプライドが、冒頭の発言につながったと考えられる。
また、バラックはケイン、ハーランド、ソン、ヴァーディー、オーバメヤン、アグエロの凄さを体験していない。こうした感覚のズレも、ファン・ダイク軽視を招いた一因ではないだろうか。