社会保険料の算定対象範囲の変更で保険料の負担が増えるかもしれない
金融所得に対する課税が検討されていることがSNS上で話題になっていますが、現在国が検討しているのは、国民健康保険や介護保険、後期高齢者医療制度の算定対象の範囲の変更です。 金融所得課税の見直しが実施されれば社会保険料が増加する可能性がある 制度が見直された場合、保険料の負担が重くなる可能性がありますので、今回は社会保険料の計算変更による影響について解説します。 ※本記事では、国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療制度の保険料を「社会保険料」と表記します。 社会保険料の算定範囲に加わる金融所得とは 社会保険料制度の見直しで検討されているのは、確定申告が不要な特定口座(源泉徴収あり)で生じた配当所得や譲渡所得を、社会保険料の算定対象に含めるものです。 所得税の確定申告は、その年に生じた所得をすべて合計して税額計算を行いますが、特定口座(源泉徴収あり)で生じた所得は、原則確定申告書に記載する必要がありません。 また、現行の社会保険料の算定においては、特定口座(源泉徴収あり)から生じた所得は対象から除かれます。 仮に、その年の所得金額1,000万円すべてが、特定口座(源泉徴収あり)から生じたものである場合、社会保険料の算定対象になる金額はゼロです。 しかし、所得金額が同額にもかかわらず、制度の違いによって社会保険料の負担額が異なるのは不均衡との意見もあったため、国は特定口座(源泉徴収あり)から生じた利益も社会保険料の計算に含めることを検討しています。 社会保険料の算定範囲が拡大すれば負担額が増加する 社会保険料の算定範囲が見直され、特定口座(源泉徴収あり)から発生した所得も社会保険料の計算に含まれることになった場合、社会保険料の負担が増える可能性があります。 社会保険料は所得が多い人ほど負担額が重くなる仕組みなので、現在は社会保険料の計算外となっている金融所得が対象に含まれることになれば、社会保険料の額が増える人も出てきます。 一方で、確定申告で金融所得を申告している人は、現行の社会保険料の計算でも対象となっていますので、現在議論の対象となっている制度見直しが実現したとしても、それだけで社会保険料の負担額が重くなることはありません。 NISAは引き続き社会保険料の算定対象から除かれる見込み 令和6年から制度が一新されたNISA制度は、NISA口座で生み出された利益はすべて非課税になるものであり、社会保険料の算定範囲の対象からも外れています。 国も制度を見直すことを検討している段階なので、どのように改正されるか不透明ですが、制度の大幅変更で保険料の負担が重くなる可能性もあるため、引き続き国の動向を注視してください。 ※2024年5月13日18:35 内容を修正致しました。
manetatsu.com 平井 拓