旨みトロトロ! あんこう‟鍋のシメ“気分を満喫できる「あん肝おじや」で日本酒がすすむ
もう20年以上は前になるんですが、当時勤めていた会社の社員旅行で福島県へ行ったことがあります。その際、ものすご~く立派な、老舗っぽい専門店で食べた「あんこう鍋」のコースが今も忘れられません。 【写真】バター焼き完成!! 材料費が100円以下、調理時間わずかに5分ですが、とてもそうとは信じられない高級感と味わい 特に印象に残っているのがシメのおじや。たっぷりとあんこうの旨味が出た鍋にさらにあん肝を足し、ごはんと玉子を加えてぐつぐつと煮たそれは、もう夢のような美味しさでした。 今回は、この時期スーパーで意外と安価に手に入る「あん肝」だけを具材に、あんこう鍋のシメ気分を味わってやろうというレシピ。これが超~お手軽なわりに、意外にもそれっぽくて、とてもいいんです。 ちなみに、スーパーの鮮魚売り場場であん肝がお手頃価格で売っているのを発見したとして、なかなか気軽にかごには入れられないという方は多いんじゃないでしょうか。和食料理店や、ちょっといい居酒屋で出てくるような、蒸しあん肝。下処理や調理が難しそうだし、そもそも作り方がわからないし。 ただ、これは僕の勝手な持論ですが、家であん肝を扱う場合、もっとゆるく考えてしまっていいと思うんですよね。 たとえば、買ってきたあん肝を流水で洗いつつ、血管や血などを目に見える範囲で洗い流す。そうしたらてきとうな大きさにカットして、ざっくりバター醤油焼きにしちゃう。 材料費が100円にも満たない、調理時間わずかに5分ほどの料理ですが、とてもそうとは信じられない高級感と味わい。外はかりっと、なかはとろ~っと、日本酒に合うことこの上なしです。 ちなみに、調理し終わったあとのフライパンで、ひと口大の米と刻みねぎなどを炒めると、残ったバター醤油とあん肝の旨味をたっぷりとまとった「あん肝炒飯」的なものができ、これでまたお酒がすすんでしまうので困ったものです。 ■酒のつまみになるおじや では本題のおじや作りへ入っていきましょう。 鍋に日本酒を加えた水を沸騰させ、洗っててきとうな大きさにカットしたあん肝(あとからつぶすので面倒ならカットしなくてもOK)を入れます。 あん肝に火が通ってきたら、おたまの底やへらなどで、あん肝を潰していきましょう。この時、アクが出れば取り除きながら。 そうしたら炊いたごはんを加え、さらにぐつぐつと煮ていきます。 作りはじめからトータルで10分くらい煮詰めると、全体がとろとろになってくるので、そのあたりでめんつゆで味つけ。ここは目分量ですが、好みの味になるまで、少しずつ味見をしながら調整してください。 最後に、ざっくりと混ぜた玉子と刻みねぎを加え、さっと煮ればできあがりです。 決して、長時間かけていろいろな具材から出た旨味が蓄積されているわけではない。けれども、このお手軽さでここまでうまいなら、なにも言うことはない。あん肝ならではの濃厚な旨味がとろりとしたお米と融合し、思わずあの日の福島の夜に想いをはせてしまう。そんな味です。 あ、もちろん、これを食事と考えてもいいのですが、ちびちび食べながら酒のつまみにするのも最高なことは、説明不要でしょうか。 ■作りかた(ひとりぶん) ■【材料】※すべて目分量で大丈夫です。分量は参考まで ・あん肝:100g ・炊いたごはん:1膳 ・玉子:1個 ・刻みねぎ:適量 ・めんつゆ:適量 ・酒150ml ■【作りかた】 1.生のあん肝をよく洗い、てきとうな大きさにカットする。 2.鍋に水300ml、酒150mlを入れて沸騰させ、あん肝を入れて煮る。アクが出ればとる。 3.あん肝に火が通ったらおたまの底などで崩し、米を加える。 4.10分ほど、全体によくとろみが出るくらいまで煮たら、加減を見つつめんつゆで味付けする。 5.溶き玉子、ねぎを加えてひと煮立ちさせたら完成。 ■ パリッコ ぱりっこ 1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー、他。酒好きが高じ、2000年代後半より酒と酒場に関する記事の執筆を始める。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。
パリッコ